特集 12. フォトニック結晶を用いた光制御

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Vol.105 No.11 (2022/11) 目次へ

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シリコンフォトニクスを用いた光通信素子の研究開発最新動向

特集

     12.

フォトニック結晶を用いた光制御

Control of Photons Using Photonic Crystals

浅野 卓 野田 進

区切り

浅野 卓 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻

野田 進 正員 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻

Takashi ASANO, Nonmember and Susumu NODA, Member (Graduate School of Engineering, Kyoto University, Kyoto-shi, 615-8510 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.11 pp.1361-1367 2022年11月

©電子情報通信学会2022

abstract

 周期的な屈折率分布を持つフォトニック結晶は,光に対する禁制帯を有し,その中に,適切な線及び点状の人為欠陥を導入することで,微小導波路やナノ共振器を形成し,光の自在な伝搬制御や微小領域への光の保持等を実現できる.本稿では,ナノ共振器に光を長時間保持する技術,機械学習を活用してナノ共振器を自動設計する技術,そして共振器結合系に光を保持している間に系の状態を変化させることによって光を動的に制御する技術について紹介する.

キーワード:フォトニック結晶,共振器,構造最適化,機械学習,動的制御,断熱転送

1.は じ め に

 シリコンフォトニクスにおいてはシリコン細線光導波路をベースとした技術に加えて,二次元フォトニック結晶(1)(3) (用語)をベースとした技術が注目されている.後者では,低群速度の導波路(4)や波長程度の大きさでかつ光閉込めの非常に強い(mathQ値(用語)の大きい)微小光共振器(5)といった細線導波路にはない機能を提供できる点が興味深い.我々はこのようなフォトニック結晶技術に関して,微小共振器の光閉込め性能の向上(5)(10)や,光の動的操作(11)(17)の研究を行ってきた.これまでに光通信波長帯域において9.2nsという世界最高の光保持時間(5)を持つ微小共振器を実現したほか,離れた共振器同士を導波路を用いて強結合させる技術(13)等を開発している.そして系の状態を動的に変化させることで,光を制御するという独自の概念を提唱し,短光パルスの長寿命共振器への高効率導入(11),任意タイミングでの共振器間光転送(15),(17),光時間発展の反転(16)などの原理実証に成功している.これらはチップ上での光(量子)情報バッファリングや分散補償等の新奇かつ有用な光機能の実現につながる技術である.我々はその他にも,機械学習を活用したフォトニック結晶構造の最適化(18),(19),チップ内光源となり得る微小共振器シリコンラマンレーザの実現(20),ハイパワー動作,高効率非線形光変換及び色中心による量子光学応用などが期待されるシリコンカーバイド製低損失フォトニック結晶の実現(21),(22)などの展開も行ってきた.本稿では,誌面の都合から,微小共振器の性能向上と動的光操作に関連した技術に絞りつつ,その概要を述べる.

2.二次元フォトニック結晶共振器

 誘電率の高いシリコン等のスラブ(薄板)に二次元の屈折率周期構造を導入した構造は二次元フォトニック結晶スラブと呼ばれ,適切な設計により面内方向の光の伝搬を禁止するフォトニックバンドギャップを形成することができる(1).またこの構造に線状に欠陥を導入すると,欠陥に沿った光の伝搬が可能になり,導波路が形成できる(1).更に局所的に欠陥を導入すると,その欠陥領域にのみ光が存在できるようになるため,微小な共振器を形成できる(1).特にスラブ層の上下に空気層があるエアブリッジ構造では,フォトニックバンドギャップによって面内方向に光を閉じ込めつつ,スラブ層と空気層との屈折率差に基づく全反射によって上下方向に光を閉じ込めることで,三次元的に光を強く閉じ込めることが可能となる(3).これにより,波長程度の微小なモード体積と強い光閉込めを持つ高Q値光ナノ共振器が実現可能となり,これを用いた光と物質の相互作用の増大や,集積度の高い光情報の保持等の実現が期待される.


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