解説 メタマテリアルと超高感度振動分光への応用

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Vol.105 No.12 (2022/12) 目次へ

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 解説 

メタマテリアルと超高感度振動分光への応用

Metamaterials and Their Application for Ultra-sensitive Vibrational Spectroscopy

田中拓男

田中拓男 国立研究開発法人理化学研究所開拓研究本部

Takuo TANAKA, Nonmember (Cluster for Pioneering Research, RIKEN, Wako-shi, 351-0198 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.12 pp.1454-1457 2022年12月

©電子情報通信学会2022

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 光の波長より細かな人工構造体を用いて物質の光学特性を制御した擬似物質がメタマテリアルである.メタマテリアルを用いると物質の誘電率や透磁率を人工的に制御できる.本稿では,メタマテリアルの中でも物質の透磁率を制御することで,金属表面からの光反射を抑制して光を高効率に吸収するメタマテリアル吸収体にフォーカスを絞り,それを利用した赤外分光法の高感度化技術を最近の研究成果とともに紹介する.

キーワード:メタマテリアル,メタサーフェス,プラズモニクス,ナノ構造,振動分光

1.は じ め に

 iPhoneの登場によって「スマートフォン」(スマホ)という言葉が一般的になった.インターネットへの接続や電子決済ができる携帯電話だが,今や携帯電話=スマホである.この波は腕時計に波及し,「スマートウォッチ」なるウェラブル端末が数多く売られている.スマートウォッチにはウェラブルであることを生かして心拍数や血中酸素,心電図などの身体情報を取得できるものもある.これらは光学的若しくは電気的な手段を用いて身体のシグナルを測定している.一方,病院などで行う検査では,血液や尿など身体内の物質をそのまま検体として用いて,その中に含まれる特定の物質の存在を測定することも多い.身体から出る物質を直接測ればより詳しい情報が分かるからだが,いまだスマートウォッチでこのような「物質」を直接測るセンサを備えたものは見たことがない.もし身体内の特定の物質(分子)の存在を常時モニタできれば,疾病等による体の変化を迅速に検知し,それに応じた対応(治療)が行える.

 このような分子センサを実現する有望な手段の一つが,赤外分光やラマン分光などの振動分光技術である.特に,新型コロナウイルス感染症のまん延に伴い,ウイルスの感染や体調の変化をいち早く高感度に計測できる技術への要望が一気に高まっており,小形かつ高感度な分子センサの開発には大きな期待が寄せられている.

 以下では,メタマテリアルという人工光学材料を紹介し,それを用いた光吸収体とその赤外分光法の高感度化技術について述べる.

2.メタマテリアルとは


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