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バイオセンシングデバイスの技術動向
小特集 2.
オンチップCMOS pHイメージセンサによるバイオイメージング
Bio-imaging with On Chip CMOS pH Image Sensors
Abstract
見えないものを見る技術は,私たちが様々な現象理解する上で重要な技術である.私たちの脳活動をはじめ様々な生体活動にはイオンや生理活性物質が重要な役割を担っていることはよく知られているが,その複雑なネットワークはいまだ解明していないことが多い.私たちはこの生理活性物質やイオンを非標識,リアルタイムに可視化することを目指し,CMOSイメージセンサ技術とバイオセンサ技術を融合させることにより,これまで見ることができなかった化学物質の動きを可視化できるバイオイメージセンサの開発を進めてきた.本稿ではCMOSイメージセンサ技術を活用したバイオイメージセンサの原理からその応用例について述べる.
キーワード:CMOS,イオン,pHイメージセンサ,バイオイメージング,非標識
スマートフォンをはじめ,車載用,監視カメラ,一眼レフカメラなど様々なところに半導体イメージセンサは活用され,私たちの暮らしにはなくてはならないセンサになっている.またこの技術は可視光のイメージングだけにとどまらず,赤外・近赤外から紫外,X線まで幅広い波長領域の電磁波をイメージングするセンサの開発が行われている.
近年,医療分野,バイオ・生化学分野の発展に伴い,生体細胞の活動やそれに伴う生体物質の授受等の観察や測定が活発に行われている.また,細胞染色法や顕微鏡などの計測技術の発展により,生体内の分子の挙動や生体物質の機能が明らかになりつつある.例えば,脳の中枢神経系を構成する細胞群の一つであるグリア細胞は,発見されてから長きにわたってその役割を過小評価されてきた.しかし,計測技術の発展によってグリア細胞の知られざる機能が明らかになりつつあり,グリア細胞のアストロサイトは神経伝達物質を取り込む機能やシナプス周辺のイオン環境を調節する機能,更にATPやGlutamateなどの神経伝達物質輸送体を放出する機能など様々な機能が明らかになっている(1).現在,バイオイメージング技術において広く利用されているものは,蛍光を用いた手法である.蛍光を用いたバイオイメージングでは,測定対象となる生体物質に対して特異的に反応する蛍光分子を用いて標識することで,生体内の分子の挙動をリアルタイム観測している(2).しかし,DNAやたん白質の検出に蛍光標識を用いた場合,光を吸収・遮光・放出する性質を持つ物質や材料の利用に制限が加えられる問題や計測後に測定対象を再び生体内に戻すことができなくなるなどの問題があるため,生体活動のバイオイメージングを非標識で検出可能とする手法への要望が高まっている.この要求に応えるため,細胞や生体で授受される神経伝達物質やイオンなどの変化をリアルタイムに非標識で検出可能なイメージセンサの実現が望まれる.
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