小特集 6. 電気化学センサ・バイオ燃料電池によるウェアラブルバイオセンシング技術

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バイオセンシングデバイスの技術動向

小特集 6.

電気化学センサ・バイオ燃料電池によるウェアラブルバイオセンシング技術

Wearable Biosensing Technology Using Electrochemical Sensors and Biofuel Cells

四反田 功 辻󠄀村清也

四反田 功 東京理科大学理工学部先端化学科

辻󠄀村清也 筑波大学数理物質系

Isao SHITANDA, Nonmember (Faculty of Science and Technology, Tokyo University of Science, Noda-shi, 278-8510 Japan) and Seiya TSUJIMURA, Nonmember (Faculty of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba-shi, 305-8573 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.3 pp.225-232 2022年3月

©電子情報通信学会2022

Abstract

 汗,尿,涙,唾液などの体液を用いた非侵襲的なウェアラブルバイオセンシングの研究が注目を集めている.将来的にウェアラブルバイオセンシング技術は,日常時の健康状態の管理や遠隔医療診断において十分な情報を提供できる.また,ウェアラブルバイオセンシングの新たな電源として,バイオ燃料電池技術が大きな関心を集めている.本稿では,酵素を電極触媒として用いた電気化学バイオセンサ,バイオ燃料電池及び自己駆動式バイオセンシングシステムについて概説する.

キーワード:電気化学センサ,バイオセンサ,バイオ燃料電池,ウェアラブルデバイス

1.は じ め に

 世界はいま,少子高齢化や地方の過疎化,環境問題,エネルギー供給問題などの都市課題に直面している.こうした都市課題に対して,今まさにIoT(Internet of Things),ロボット,人工知能(AI),ビッグデータといった技術開発を行うことにより課題解決に取り組んでいる最中である.IoT技術の導入により,インターネット経由でセンサと通信機能をもった‘もの’をつなげることによって様々なデータを伝達することが可能になる.

 このなかで,セルフヘルスケアや遠隔医療への応用に向け,IoTを利用した介護医療用バイオセンシング技術の開発に注目が集まっている.特に採血を行わない非侵襲的な汗,尿,涙,唾液などの体液を用いたウェアラブルバイオセンシングの研究が数多く進められている(1)(3).ウェアラブルバイオセンシングとは,バイオセンサ(詳細は後述)を直接肌に身に着けて,体内もしくは体表面の生理活性物質を測定することをいう.将来的にウェアラブルバイオセンシング技術は,日常時の健康状態の管理や遠隔医療診断において十分な情報を提供できると期待されている.一方で,この課題に取り組むときに常に課題となるのは,ウェアラブルバイオセンシングシステムの電源の安定的な確保である.システムをありとあらゆるシチュエーションで使おうとする場合,その周りに常に電源があるとは限らない.ウェアラブルバイオセンシングシステムの開発においては,安全性や製造コストとともに,新たな電源について検討する必要がある.その新たな電源として,バイオ燃料電池(BFC: Biofuel cell)が注目されている.

 BFCは,生体触媒を電極触媒として使用する発電デバイスである(図1).BFCの生体触媒として酵素(酸化還元酵素)を用いた場合は酵素型BFC,微生物を用いた場合は微生物型燃料電池と呼ばれている.本稿では,特に断りのない限りBFCは酵素型BFCを指す.詳細は後述するが,BFCを用いることで自己駆動式ウェアラブルバイオセンシングシステムを作ることができる.自己駆動式デバイスとは,体液中の有機化合物(例えば汗中の乳酸や尿中の糖)をBFCの触媒である酵素と反応させて電力を取り出し,この電力値と有機化合物濃度の相関性から,体液中の有機化合物濃度を測定可能なものであり,電源とセンサの両方を兼ね備えているものをいう.


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