ニュース解説 磁性材料におけるスピン変換の機構を解明──次世代の不揮発性磁気メモリ実現に向けて──

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Vol.105 No.3 (2022/3) 目次へ

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最近の新聞等で報道された技術情報を深める ニュース解説

◆今月のニュース解説

磁性材料におけるスピン変換の機構を解明

 ――次世代の不揮発性磁気メモリ実現に向けて――

 Clarifying the Mechanism of Charge-to-spin Conversion in Ferromagnet

10万スピンコヒーレントイジングマシンを実現

 ――世界最大級の光計算機による大規模組合せ最適化問題の高速な解探索を実証――

 100,000-spin Coherent Ising Machine: High-speed Solution Search for Large-scale Combinatorial Optimization Problems Enabled with a Large-scale Optical Computer

磁性材料におけるスピン変換の機構を解明

――次世代の不揮発性磁気メモリ実現に向けて――

 国立研究開発法人産業技術総合研究所の研究グループは,磁性材料において電流がスピン角運動量の流れ(スピン流)への変換現象(スピン変換)の機構を解明し,その変換効率の大幅な向上を実現した.

 膨大なデータを解析する人工知能(AI)の役割がますます重要となっている中,IT機器の省電力化は必須である.その解決策の一つとして,省電力性に優れた不揮発性磁気メモリ(MRAM: Magnetic Random Access Memory)が大きな注目を集めている.中でも,スピン軌道トルク型MRAM(SOT-MRAM)は,従来のMRAM構造に比べて高速動作と高い信頼性を両立しやすいという利点をもち,次世代の超高速メモリとしての応用が期待されている(図1).SOT-MRAMでは駆動層から生じるスピン変換によって,情報書込み(微小磁石の反転)が行われており,駆動源としてスピン軌道相互作用を利用した非磁性材料のスピンホール効果(スピン変換の一つ)が用いられてきた.しかし,高集積化に際して誤書込みなどの問題が生じてしまうことが実用化への大きな障壁となっていた.この問題点を解決するためには垂直に分極したスピン流生成が効果的であり,スピンホール効果に替わる新たなスピン変換技術や駆動層材料の開発が求められていた.


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