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極限環境の計測を支える回路とシステム技術
小特集 1.
民間宇宙ロケット用アビオニクス機器に対する諸要求と実現
Design Requirements and Implementation of Avionics System on Commercial Space Launch Vehicles
Abstract
民間主導の宇宙開発が世界で活発化しており,ロケットも純民間での開発・運用が現実に行われるようになってきた.民間ロケットは高い安全性を持ちつつも低コストでなければならない.従来,飛行を制御するために搭載されるアビオニクス(計算機系)が,少量生産の特殊部品を使うことからコスト高騰の主原因となっていた.しかし自動車産業や医療産業などで計算機利用が進み,高性能・高信頼・低コストな電子部品が大量生産されるようになり,その多くは宇宙飛行環境でも利用できる.そのような社会状況変化により初めて,商業ベースに乗る民間ロケットが実現可能となった.
キーワード:NewSpace,宇宙開発,アビオニクス,スピンオン,民生品利用
民間主導の宇宙開発が世界で活発化している.ロケットや人工衛星,有人宇宙船といったハードウェア分野からリモートセンシング情報提供などサービス分野に至るまで広範囲の開発や事業化が行われており,それらの活動全般を指してNewSpace(ニュースペース)と呼ぶ(1),(2).民間宇宙開発に特徴的な事項として,商用目的であること,技術開発や事業展開の速度が速いこと,Society 5.0やディジタルトランスフォーメーション(DX)に代表される情報社会進展との関連が密接であること等が挙げられる.
民間宇宙開発が可能になった主な理由の一つが,ロケットや人工衛星など宇宙機に搭載する情報処理装置(アビオニクスと呼ばれる)の高性能化,小形化,低電力化,高信頼化,低価格化が著しい速度で進んだことである.宇宙機の安全性と事業採算性を各々必要な水準で満たさなければならないが,それはアビオニクスの上記進歩が起こらなければ不可能であった.
宇宙空間で利用されるアビオニクスは特殊な物だとの印象を一般には持たれがちだが,環境条件を含め,開発と運用において要求される諸条件の全てが特殊なわけではない.車載用途や医療用途など人命に直結する機器,大量生産され不良品率が事業成否に直結する機器,屋外で長期利用される機器など,要求条件の一部がアビオニクスと同水準かそれ以上に厳しい物は数多い.
したがって,他業種・他用途で利用実績を積み上げている電子部品(プロセッサやセンサ等)やその設計・製造・試験手法をカスタマイズしつつ取り入れることで,アビオニクスの高信頼化と低価格化を達成できる.このようなスピンオンはアビオニクス以外の技術分野でも行われており,民間宇宙開発における重要な基本戦略の一つである.
本稿では,筆者らが開発している民間宇宙ロケットを事例とし,アビオニクスがさらされる環境条件,要求事項,及び実現方法を概説する.
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