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極限環境の計測を支える回路とシステム技術
小特集 4.
放射線環境下での計測技術を支える
半導体デバイスとその応用
Semiconductor Device and Application Supporting Measurement Technology in Radiation Environment
Abstract
本稿では,原子力発電所に取り付ける計測器の放射線耐性の向上を目的に,炭化けい素(SiC)を用いた集積デバイスとその応用事例について述べる.SiCはワイドバンドギャップ半導体の一つで,けい素を用いた従来デバイスと比較し,放射線による欠陥が誘起され難い.筆者らは,このSiCの優れた特性に着目し,相補形MOS(CMOS)を用いた集積デバイスを開発した.開発した集積デバイスを計測器の一つである圧力伝送器へ実装したところ,従来型と比較して放射線耐性が約100倍改善された.これは,原子力発電所の想定し得る過酷な放射線環境に耐えるレベルである.
キーワード:原子力発電所,過酷環境,放射線,計測器,炭化けい素,集積デバイス
原子力発電所は原子炉に装荷された燃料の核分裂を利用する施設で,この核分裂の反応過程において,中性子線やガンマ線などの放射線が発生する.原子力発電所に設置される計測器では,放射線照射に伴う電子部品の特性劣化が問題で,特に透過力の高いガンマ線の影響が大きい.このため,計測器ではデバイス選定の強化や回路設計の最適化,これらの対策で十分でない場合,計測器をガンマ線の低い環境へ設置したり,鉛の遮蔽壁にて計測器へのガンマ線照射量を低減するなど,システム側も含めて対処してきた.一方,ガンマ線耐性に対する要求は,東日本大震災以降,過酷事故や廃炉等の耐放射線性計測が求められる箇所で高まっている(1).従来の対処法だけでは高まる放射線耐性の要求を完全に満足することは難しく,抜本的な対策が求められている.
本稿では,計測器に搭載される電子部品の中でもガンマ線耐性の低い半導体デバイスに議論を絞り,これの放射線劣化の原理について概説する.また,筆者らが開発を進める耐放射線デバイスと,それを用いた応用事例について紹介する.
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