解説 機械学習を用いた二次元フォトニック結晶共振器の構造最適化

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 解説 

機械学習を用いた
二次元フォトニック結晶共振器の構造最適化

Optimization of Photonic Crystal Cavities Based on Machine Learning

浅野 卓 野田 進

浅野 卓 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻

野田 進 正員 京都大学大学院工学研究科電子工学専攻

Takashi ASANO, Nonmember and Susumu NODA, Member (Graduate School of Engineering, Kyoto University, Kyoto-shi, 615-8510 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.4 pp.306-313 2022年4月

©電子情報通信学会2022

A bstract

 二次元フォトニック結晶スラブ(薄板)を用いたナノ共振器は,波長程度の微小領域への長時間の光閉込めが可能という特長を持ち,光と物質の相互作用の増強,光情報の保持,保持した光の動的制御等の高度な光操作に利用できる.このような二次元フォトニック結晶共振器は多数の空気孔から構成されているため非常に高い構造自由度を持つが,その自由度の高さゆえに十分な設計を行うことは困難であった.これに対して我々は,ランダムに構造パラメータを変えて生成した複数のサンプル構造とその性能指数(Q値等)から成る学習データを用意して,これを学習させることで構造から性能指数を近似的に予測できる機械学習モデルを構築し,そのモデルの予測値を用いて構造探索を行う手法を提案した.これにより,これまでにない高い性能の共振器を設計することに成功し,また複数の性能指数の同時最適化にも成功した.更に,この探索手法で見つかった候補構造とその性能指数の第一原理計算結果を学習用データに加えて機械学習モデルを更新し,その更新されたモデルを使って更なる候補構造を探索することを繰り返す手法を提案した.これにより広いパラメータ空間において構造探索を行うことが可能になり,所望の性能を得るために初期構造と大きく異なる構造が必要な場合でも最適化を行うことが可能になった.本稿ではこれらの最適化手法について,実証実験の結果も示しつつ解説する.

キーワード:フォトニック結晶,共振器,機械学習,構造最適化

1.は じ め に

 図1に示すような二次元フォトニック結晶(用語)(2D-PC)スラブ(薄板)を用いたナノ共振器(1)(4)は,波長程度の微小領域への長時間の光閉込めが可能という特長を持ち,光と物質の相互作用の増強,光情報の保持,保持した光の動的制御等の高度な光操作に利用できる(5).我々はこれまでに2D-PCナノ共振器の低損失化(math高Q値(用語)化)に取り組み,これを活用して超小形波長分波素子(1),光子の動的な捕獲・解放(6),離れた共振器間での任意タイミングでの光子転送(7),Siラマンレーザ(用語) (8),光の時間反転(9),超高効率二次高調波発生等(10)の種々の応用を実現してきた.共振器単体の性能としては,1億以上の高いQ値を持つヘテロ構造共振器構造を見いだし(4),実験的にもSiを用いて作製した共振器構造において,波長程度のナノ共振器として世界最高のQ値である1,100万を実現している(11)

図1 二次元フォトニック結晶スラブ型共振器の発展  いずれも厚み200nm程度のSi薄板(スラブ)に空気穴を配列することで共振器が構成されている.A,B,C等は位置を微調整した空気孔を示す.


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