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解説
ソーシャルメディア上の情報拡散とその理解
Information Diffusion on Social Media
A bstract
近年,ソーシャルメディア等の普及により,社会に存在する情報量は増加の一途をたどっている.それによって,我々が接触可能となる情報は増大する情報のごく一部に限られるようになった.そのため我々は特定の事象についても,網羅的に情報を把握・理解するのが困難となり,ソーシャルメディア上に存在する膨大な情報を把握・理解する方法が求められている.本稿ではソーシャルメディアの一つであるTwitter上の話題を分析し,対象となる話題がどのようにトピックから成り立っているかの理解を支援する手法について紹介する.分析の具体例として新型コロナワクチンに関する話題の分析を行い,どのような話題がどの程度一般的に広まっていたのかを明らかにする.
キーワード:ソーシャルメディア,ネットワーククラスタリング,Twitter,計算社会科学
ソーシャルメディア上では多くの投稿が行われており,社会的に注目される事件やイベントが発生すると,多くのユーザがその事象について情報や感想,意見などを投稿する.これらの情報は社会の一部を写す鏡とみなすことができ,観測不可能な社会の動向を探るセンサとして利用可能であるとされる(1).
ソーシャルメディアの情報の中には普段は接することがないものや,貴重な情報が含まれる場合もあり,人々の感情の変化などを推定することが可能になる.その性質を利用して,古くからソーシャルメディアを使って選挙を予測する動き(2),(3)や,災害時にソーシャルメディア上の情報を利用して災害支援に役立てる研究(4)~(7)がある.
しかしながら,同一イベントに対しても人々の投稿する内容には様々な視点が存在する.例えば,災害が発生した場合であれば,被災者と支援者,あるいは遠くから経緯を見守っている人々では,投稿する内容が異なるであろう.あるいは,政治的な内容であれば党派性などの立ち位置から,全く異なる視点による情報が多数投稿される.このようなソーシャルメディア上でやり取りされているトピックにどのようなものがあるかを理解することは,当該イベントが社会的にどのように捉えられているのかを理解する一助になると期待される.
トピック分類の一般的な手法として,LDA(8)を使った言語的手法があるが,同一の話題に対してトピック分類を行うとその精度は必ずしも高くない.また,Twitterのような短い文章では自然言語によるトピック分類の精度は低下する上に,画像や動画像などが中心の情報では分類自体の手掛かりがなくなる.
本稿では,Twitter上のツイートデータをその拡散アカウントに基づいて分類しトピックを抽出する手法を紹介する(9),(10).また,得られたトピックに対して,ユーザのコミュニティを推定する手法を組み合わせることで,当該トピックが一般的なトピックなのか,一部の特定の人々によって拡散されているかを推定し,拡散している情報をどのように扱えばよいのか,その知見を得る方法についても紹介する.
Twitterにおける情報の拡散はリツイートによって行われる.拡散を行うということは何らかの意味で当該ツイートに興味を持っているということを意味すると考えれば,拡散したユーザが類似したツイート同士は何らかの意味で類似性があるといえる.
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