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ディジタル計算に基づく情報技術は総体として,過去70年にわたって社会に大きなインパクトを与えてきた.情報技術約70年の歴史の中で,多くの革新的技術が開発されてきたが,深層学習ほど社会の多面において変化をもたらしているものはないだろう.本稿では特に,科学と社会に対する含意について議論する.
キーワード:深層学習,データ科学,計算理論,科学方法論
本特集のこれまでの記事は,画像認識,音声認識など様々な応用領域における深層学習のインパクトをカバーしてきた.しかし,深層学習はもっと根源的なレベルで,我々が今まで常識だと思っていたことを変えていくように思われる.本稿では,特に科学と社会におけるインパクトについて考える.2.では,データ科学そのものに与える影響を,3.では計算機科学を,4.では自然科学を,そして5.では社会全般について,深層学習によってどのように根源的な変化がもたらされるかを考える.
まずデータ科学について見ていこう.ここではデータ科学を,データ分析に関わる様々な手法を広く捉えたものと考える.
データ科学の中心にある概念の一つは統計モデリングであり,これは観測したデータから,そのデータの裏にある仕組みを確率分布の形で推定する技術である.確率分布は確率質量関数(離散変数の場合)あるいは確率密度関数(連続変数の場合)の形で与えられる(以下これらを合わせて確率分布関数と呼ぶ).本来,確率分布関数は,「かつ全てのについてのの総和が1」という条件さえ満たせば,関数の形は問わない.また,その定義域はスカラ値だけでなく,ベクトルであっても構わない.しかしながら,伝統的な統計モデリングで扱われてきたのは,正規分布やポアソン分布のように解析的に扱いやすい関数形,しかも定義域はスカラ値か,極めて低次元のものだけだった.このような確率分布関数を,本稿ではパラメトリックなモデルと呼ぶことにする.パラメトリックな統計モデリングの世界では,(1)観測対象の特徴をいかに低次元のベクトルで表現するか(特徴量エンジニアリングと呼ばれる),(2)モデルをいかによく知られた関数形で表現するか(モデル選択と呼ばれる),がデータサイエンティストの腕の見せどころだった.
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