最優秀論文賞贈呈

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Vol.105 No.7 (2022/7) 目次へ

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2021年度 第4回 最優秀論文賞贈呈(写真:敬称略)

 本会選奨規程第17条による最優秀論文賞(第4回)は,下記の論文を選定して贈呈した.

新幹線架線電圧検知・無線通信共用アンテナの小形化と試験結果

(和文論文誌B 2021年1月号掲載)

受賞者 松村善洋 受賞者 西山武志 受賞者 笹木栄志 受賞者 西本研悟 受賞者 圷 浩行 受賞者 眞田幸俊

 1964年に東海道新幹線が開業し50年以上経過しているが,新幹線の高速化において騒音低減は常に重要な課題である.東海道新幹線車両の屋根上に設置されている架線電圧検知・無線通信共用アンテナ(鉄道では静電アンテナと呼ばれている)は,60Hzの架線電圧を検知する機能と,VHF帯の無線通信を行う機能の双方を有している.この静電アンテナは,車両の屋根から突起しているため騒音源の一つであるが,その機能の秀逸さから,内部構造は東海道新幹線開業以来変更されていなかった.本論文はキャラクタリスティックモード解析を行うことで従来の静電アンテナの特徴を把握し,その内部構造を改良することにより,同等の機能で騒音低減効果を得る静電アンテナの提案を行っている.

 低騒音化のためには架線電圧を検知する検知棒の短縮が必要であるため,折返しモノポール構造と並列共振回路といったアンテナ基板構造の工夫により検知棒を41%短縮し,高さを5%低背化したアンテナを提案した.提案静電アンテナはアンテナレードーム形状内で基板面積を可能な限り大きくし実用上問題ない架線電圧検知性能を確保するとともに,無線通信アンテナ性能について広帯域整合を実現し,水平面内の利得を3.1~4.5dB向上させた.提案アンテナの実使用を考慮し,積雪・降雨の架線電圧検知性能への影響も実験と計算により評価考察するとともに,新幹線車両に搭載しての走行試験結果を示した.東海道新幹線全線を通しての架線検知電圧の最低値は架線加圧有無を判定可能な基準値の6.7倍であること,提案静電アンテナの無線受信レベルは従来アンテナより0~2.6dB高く両アンテナの利得の差分が走行試験結果に現れていること,更に騒音測定により低騒音化の効果を確認した.その結果,提案静電アンテナは東海道新幹線N700Sの騒音低減に資するアンテナとして使用されている.

 本論文は,提案静電アンテナを理論計算と実測,走行試験により詳細に評価することで実用化に結び付けており,本会最優秀論文賞に値する論文として高く評価できる.

区切


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