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5G/Beyond 5Gを実現する技術――フロントエンドデバイスから仮想化まで――
【フロントエンド】
小特集 1.
5G/Beyond 5Gを実現するミリ波フェイズドアレー無線機技術
Millimeter-wave Phased-array Transceiver for 5G and Beyond
Abstract
ミリ波帯(30~300GHz)での無線機が安価なCMOS集積回路により実現できるようになり,スマートフォン等のコンシューマ向け端末への搭載が可能となった.本稿では,Beyond 5Gへの研究開発に向けて,現状の5Gで用いられているミリ波帯フェイズドアレー無線機の基本的構成や実装技術について解説する.フェイズドアレーによる無線通信の理論から,実際の設計に基づく回線設計,今後の展望について述べる.
キーワード:ミリ波,5G,フェイズドアレー,CMOS
第5世代移動通信システム(以下,5G)では,4K/8K高精細動画像伝送の普及や,VR/ARなどの新しいサービスに対応するために,前世代技術に比べて10倍以上の10Gbit/sを超える高速通信が目標とされている.その実現のために,5Gでは,広い信号帯域幅を確保できるミリ波帯(30~300GHz)が利用されている.しかしながら,ミリ波は,電波の減衰が大きいことに加え,直進性が強く,建物などの陰への回込みが小さいなど,移動通信には適用しにくい特性を有している.これを補うために重要となる技術が,ビームフォーミングである.ビームフォーミングは,空間的に放射される電波を特定の方向に集中して放射する技術である.通信したい端末の方向に電力を集中することで,通信距離を伸ばすことができる.また,電波を空間的に多重化することで,周波数利用効率を向上し,通信容量を増やすことも可能である.このようなビームフォーミングによるミリ波帯無線通信を行うために,フェイズドアレー技術が用いられている.5Gに続く,Beyond 5G技術では,ミリ波帯フェイズドアレー無線技術の高度化が求められており,従来の高速通信と併せ,低消費電力化や低コスト化が必要とされている(1)~(3).
本稿では,Beyond 5Gの実現に向け,現在の5Gで用いられているミリ波帯フェイズドアレー無線機の概要や基本的構成方法について解説する.特に,ミリ波帯でのフェイズドアレーアンテナ,パッケージ,ビームフォーミングIC(集積回路:Integrated Circuit)の概要や基本的な構成方法について解説する.
ミリ波を無線通信に使うにあたり,十分な通信距離を確保することがまずは第1の課題である.搬送波周波数が高くなるに従い,自由空間伝搬損(FSPL: Free Space Path Loss)が大きくなる.マイクロ波帯でのような無指向性アンテナを用いた通信では十分なリンクマージンが確保できず,前述のフェイズドアレー技術を用いたビームフォーミングによる通信距離の延伸が必要である.本章ではフェイズドアレー無線通信の基本原理について説明する.
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