小特集 3. 中小企業でもできるフロントエンド開発事情

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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5G/Beyond 5Gを実現する技術――フロントエンドデバイスから仮想化まで――
【フロントエンド】

小特集 3.

中小企業でもできるフロントエンド開発事情

Front-end Development by a Small Company

戸部英彦

戸部英彦 (株)アイダックス

Hidehiko TOBE, Nonmember (iDAQS Co., Ltd., Tokyo, 167-0042 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8 pp.720-728 2022年8月

©電子情報通信学会2022

Abstract

 (株)アイダックスは2001年の創業から高速A-D & D-A,FPGA(Field Programmable Gate Array)を搭載した無線研究向け測定器(データ収集やデータロガーと呼ばれる装置)を提供するディジタルハードウェアの会社である.近年,A-D & D-Aはギガサンプリングの高速化に加えて,ミクサフィルタ等のDigital Up/Down Converterが組み込まれたチップの高機能化が進む.Sub6の領域は,アンテナやPA/LNAは残るものの,今やディジタル処理で大部分が解決する時代である.更にオープンソースソフトウェア(OSS)によりLTE,5GがPC上で動作する.このような背景から,小規模な当社が,5Gのフロントエンドからコアまでを実験キットとして構築できるようになった.本稿では,このような実験キットの開発事情を紹介する.

キーワード:オープンソースソフトウェア,ソフトウェア無線,ローカル5G,基地局

1.開 発 事 情(1)

 「OSSによるローカル5G基地局実験キットの開発」のタイトルで2021年7月から共同研究を進めている.本研究では,自社開発済みのFPGAボードを基礎に,Sub-6のローカル5G周波数のRF部,OSSによるベースバンド処理部(RAN)及び5Gコアネットワーク(5G-CN)の大きく三つの構成要素がある(図1).(株)アイダックス(注1)は5GのOSSの中でメジャーなコミュニティの一つであるOpen Air Interface(OAI)のメンバーである.OAIではこの三つの構成要素及びUEも提供されている.当社のような中小企業でも5Gを構築できるのはこのOAIを採用していることが理由である.

図1 共同研究の全体構成  主な開発対象は5G基地局であり,無線部とベースバンド処理部で構成されるRAN(Radio Aera Network)である.検証のためコア,端末も準備するため5G全てとも言える.

 無線研究者の方にとって,測定器を購入し解析ができて研究成果となれば幸いなことである.しかしながら,誰でも購入できる測定器では性能が低かったり,性能が十分な場合には非常に高額であったり,先端の研究を目指すほど,帯に短したすきに長しで見合った測定器は見当たらない.そこで,特注したりカスタマイズを考えても予算の壁に突き当たり現実的ではなくなる.無線研究者の方にとり測定器を作ることが研究目的ではないが,測定器やツールを理解し,カスタマイズや特注の設計費用感覚を養うことも必要である.

 当社では図2にあるように,Analog Devices, Xilinxなどのチップベンダから高性能かつ安価な評価ボードが提供されている.これらを使いこなすことが研究成果を上げる近道であるが,使いこなすためには専門のHW/SWプログラム経験が必要である.


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