小特集 5. ソフトウェア無線機を用いたOAMモード多重無線伝送実験システム

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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5G/Beyond 5Gを実現する技術――フロントエンドデバイスから仮想化まで――
【フロントホール・バックホール】

小特集 5.

ソフトウェア無線機を用いたOAMモード多重無線伝送実験システム

Experimental Equipment of OAM Mode Multiplexing Radio Transmission Using Software Defined Radio

平部正司

平部正司 正員 日本電気株式会社第一ワイヤレスアクセスソリューション事業部

Masashi HIRABE, Member (1st Wireless Access Solutions Division, NEC Corporation, Kawasaki-shi, 211-8666 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8 pp.736-743 2022年8月

©電子情報通信学会2022

Abstract

 5G/Beyond 5Gに向けて基地局は数十~100Gbit/sへの大容量化やミリ波や分散MIMO導入のため密な置局が進む.このような状況に対応するためにフロントホール,バックホールの超大容量化や無線化の要求が高まっている.この要求に対応するための超大容量無線伝送技術として,大きな多重数を実現する可能性を持つOAMモード多重無線伝送が注目されている.本稿ではソフトウェア無線機を用いて開発したOAMモード多重無線伝送の実験システム,及びこの実験システムを用いて行った検証実験の結果を紹介する.

キーワード:OAM,軌道角運動量,ソフトウェア無線機,OAMモード多重

1.は じ め に

 5G/Beyond 5Gに向けて基地局は数十~100Gbit/sへの大容量化が進められている.基地局の大容量化に伴い,バックホール,フロントホールの大容量化も必要となる.また,ミリ波や分散MIMO(用語)の導入により多数の基地局が密に置局されるようになり,光ファイバだけではなく,無線によるバックホール,フロントホールが必要となる.そのため100Gbit/sを超える超大容量無線通信技術が必要となる.これを実現する技術の一つとして,高い空間多重数を実現する可能性を持つOAM(Orbital Angular Momentum)モード多重無線伝送技術が注目され,研究開発が進められている(1)

 本稿では,平成28年度から令和元年度まで実施された総務省委託研究「ミリ波帯における大容量伝送を実現するOAMモード多重伝送技術の研究開発」にて行ったソフトウェア無線機を用いたOAMモード多重無線伝送の検証実験について紹介する.ソフトウェア無線機を用いた実験システム,及びこの実験システムを用いて行った検証実験の結果を紹介し,更にFPGA(用語)を用いたリアルタイム伝送が可能な実験システムによる屋外実験の結果を紹介する.

2.OAMモード多重無線伝送(1)

 OAMとは軌道角運動量のことで,電磁波にも軌道角運動量が存在することが知られている(2).OAMには直交する無限のモードが存在し,これらのモードに情報信号を載せて伝送することで大きな多重数の伝送が期待できる.OAMモードと偏波は電磁波の独立したパラメータであるため,OAMモード多重と同時に偏波多重を行うことが可能であり,多重数を更に2倍に拡大できる.

 OAMモードは図1に示すように等位相面がらせん状に回転して伝搬している.等位相面の回転数及び回転方向の異なるモードが存在し,互いに直交している.等位相面の回転数を次数,回転方向を+/-を用いて表される.


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