小特集 6. GPUを用いた無線基地局の仮想化技術

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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5G/Beyond 5Gを実現する技術――フロントエンドデバイスから仮想化まで――
【基地局・コアネットワーク】

小特集 6.

GPUを用いた無線基地局の仮想化技術

Virtualization Technology for Wireless Base Station Using GPU

矢吹 歩 堀場勝広

矢吹 歩 正員 ソフトバンク株式会社先端技術研究所

堀場勝広 ソフトバンク株式会社先端技術研究所

Ayumu YABUKI, Member and Katsuhiro HORIBA, Nonmember (Advanced Technology Division, SoftBank Corp., Tokyo, 105-7529 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8 pp.744-748 2022年8月

©電子情報通信学会2022

Abstract

 モバイル通信事業者において,無線基地局の仮想化(vRAN)が世界的に注目されている.これまでのvRANシステムでは,無線のディジタル信号処理などの複雑な計算をFPGAやDSPと言ったアクセラレータを使ってオフロードしてきた.一方で近年GPUを利用した製品の開発も進んでおり,Beyond 5G時代に期待されているディジタルツイン社会の実装に向けて,汎用サーバ上で機械学習などのMECアプリケーションと基地局機能とがGPUを共有する技術が注目されている.本稿ではGPUを用いたvRANの特長を定量的な性能評価とシステム全体としての利点に着目して紹介する.

キーワード:ネットワーク仮想化,アクセラレータ,GPU

1.は じ め に

 モバイル通信事業者における無線基地局の仮想化(以下,vRAN)が世界的に注目されており,一部の事業者では商用化が始まっている.ネットワークの仮想化は,これまで専用のハードウェアで実装されてきたネットワーク装置を汎用的なハードウェアとソフトウェアで実装する技術である.仮想化によって,様々な用途のネットワーク機能でハードウェアを共有し,クラウドコンピューティングで成熟した展開・運用技術を転用することで,装置や運用のコストが大幅に削減されることが期待されている(1).しかしvRANでは,無線のディジタル信号処理に代表される複雑な計算に関して,汎用的なCPUでは消費電力や処理速度の面で専用装置と比較して効率性が低いため,周波数帯域幅や収容セル数を限定した利用が一般的だった.

 ディジタル信号処理の一部は,汎用的なCPUで効率的に処理することが難しく,アクセラレータと呼ばれる特定の処理に特化したプロセッサが利用される.これまでに製品化されているvRANシステムでは,ディジタル信号処理に特化したDSPや,プログラミングによって記述された論理回路の構成を再設定可能なFPGAが主なアクセラレータとして利用されてきた(2).一方,研究ではGPUもアクセラレータとして利用されており(3),近年NVIDIA社がvRANのソフトウェア開発キット(SDK)(4)を発表して以来,vRAN向けアクセラレータとしてのGPU利用が新たな選択肢として注目を浴び始めている.

 そこで,本稿では第5世代移動通信システム(5G)におけるvRANにおいて,アクセラレータとしてGPUを利用した場合の利点と,実際にその性能を評価した結果について述べる.具体的には,NVIDIA社が提供しているGPUハードウェアとvRANのSDKを利用して評価を行った結果と考察について述べる.

2.vRANの技術概要

2.1 vRANのアーキテクチャ


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