オピニオン 研究知を社会にどう生かしていくか?──これからの研究共創に必要な支援とマインド──

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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オピニオン 研究知を社会にどう生かしていくか?――これからの研究共創に必要な支援とマインド―― Returning the Knowledge of Researchers to Society: Support and Mindset Needed for Co-creation of Research in the Future

原田久美子 (株)A-Co-Labo E-mail info@a-co-labo.co.jp

1.は じ め に

 皆さんは日本の研究者を取り巻く問題について検索したことがあるだろうか.検索するとネガティブな記事やデータが上がっており,日本の研究力の低下に不安を感じる方もいらっしゃるのではないだろうか.

 日本の研究者を取り巻く課題は要因が複雑に絡み合っており,一つの原因を取り除いたからといって解決する問題ではない.抱える課題に対して様々な道筋から解決の山頂を登らねばならない.筆者は企業研究員から大学研究員に戻った経験から,研究支援の企業を2020年に立ち上げた.起業後にたくさんの若手研究者と話してきたが,決して日本の研究者が諸国と比べ劣っていると思ったことはない.むしろこの会社を立ち上げてからは,現状をしっかり認識して,この状況を変えたいと語る若手研究者に多く出会う.研究自体は優れているものの研究フェーズで終わってしまい,その先のビジネスフェーズまで中々たどりつけない状況にある.つまり,未来を作る発想力を持つ研究知(用語)と,社会実装から積み上げてきた実践知(用語)が,適切につながり循環するスキームがもっと必要ではないかと考えている.

 今回は博士人材のキャリアや産学連携の課題から,研究知を社会に生かしていくために必要な支援とマインドについて考えてみたい.

2.日本の博士人材の課題に関して

2.1 産業界における博士人材の状況

 文部科学省科学技術・学術政策研究所NISTEPの「博士人材追跡調査」第4次報告書によると,2018年実績では,博士課程修了者の35.6%が民間企業や公的機関へ就職している(1).企業における研究者の博士号取得者は約4%.企業の研究人材は修士課程修了者が大半を占めており,博士号取得者の割合は,この20年横ばい傾向に推移している(2)


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