別冊特集 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のテクノロジーとイノベーション 発行にあたって

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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特集

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のテクノロジーとイノベーション

発行にあたって

 56年ぶりに東京で開催される大会として,東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)は2013年9月にその開催が決定されて以来,スポーツ業界のみならず多くの産業界からも熱い注目を集めてきた.電子情報通信学会誌では2014年12月号をはじめとして何度か小特集を組んできたが,このたび東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委員会)及びそのパートナー企業・関連団体・政府機関の協力を頂き,通信ネットワーク,情報システム,サイバーセキュリティなど,幅広い技術分野を網羅した総括的な特集「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のテクノロジーとイノベーション」を発行することとなった.

 東京2020大会は,オリンピック33競技,パラリンピック22競技,競技会場数が43という数字に代表される過去最大規模での開催だったというだけでなく,新型コロナウイルス感染症の世界的拡大(コロナ禍)という人類が経験したことのない困難を受けて,大会史上初めての1年延期,厳しい感染対策の下での大会運営,という点においても,情報通信技術の観点から記録に残すべき歴史的イベントであったことは間違いない.以下に,幾つか代表的な実績を挙げてみる.

大会運営にあたっては,アスリートや競技団体関係者など大勢の関係者が海外から来日したにもかかわらず,関係者による感染のクラスターは一切発生していなかったと報道されている.大量の検査情報の管理や三密防止対策として,ディジタルツールや会場のネットワーク環境が大いに活用されたものと推測される.

大会観戦については,残念ながらほとんどの会場が無観客での開催となった一方で,テレビやディジタルメディアでの視聴者数はこれまでの大会で最大であったことが,国際オリンピック委員会からも発表されている.関連するインフラ技術の運用には,細心の注意と万全の体制がとられたはずである.

商用サービスが始まった5Gや超臨場感通信技術を使った新しい競技観戦体験の提供,聖火や関係者輸送車両での水素エネルギーの活用,大会運営へのロボットの導入など,様々なイノベーションプロジェクトが,組織委員会やパートナー企業から報告されている.これからの本格的な市場導入に向けて,貴重な実績となったものと思われる.

大会前には,東京2020大会を狙ったサイバー攻撃の可能性が,各種報道でもさんざん取り上げられていたにもかかわらず,大会に影響を及ぼすサイバー攻撃は一切確認されなかったことが,政府・組織委員会から報告されている.その舞台裏では,想像を絶する努力がなされたものと推測される.

 このように,大会運営において組織委員会をはじめとする関係組織が,多大な知恵と努力を費やして導入したであろうテクノロジーとイノベーションの知見・経験は,コロナ禍で大きく変わってしまった社会生活をより豊かにしていくために,産業界にとっても貴重な遺産(レガシー)となることが期待される.

 本特集がそのようなレガシーの形成のための一助となれば幸いである.


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