電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
1.序章
東京2020大会のテクノロジーとイノベーションの総括
Summary of Technology and Innovation in the Tokyo 2020 Games
本稿では,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で導入されたテクノロジーを過去大会のテクノロジーの進化の観点から俯瞰し,その全体像を定量的に紹介するとともに,プロジェクトの成功要因と大会が残したレガシー,更にはイノベーションへの取組みについて記述することで,今回の特集の総括とする.
キーワード:通信ネットワーク,情報システム,サイバーセキュリティ対策,イノベーション
新型コロナウイルス感染症による影響(以下,コロナ禍)を受けて1年延期された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)は,まずは膨大な計画修正作業や契約変更作業に従事する職員のリモートワーク環境の提供,更には大会関係者の入国手続きや健康管理,密防止対策などのために,これまでの大会以上にディジタルツールへの依存が大きい大会であった.またオリンピックパークのない大会として,これも大会史上最も広域に通信・放送ネットワークを構築する必要があった.更にサイバーセキュリティ対策は,平昌2018大会開会式で発生したサイバーインシデントを受けて,世界中が注目する課題だった.そして多くの会場が無観客での開催となった一方で,大会史上最も競技結果を配信するディジタルメディアへのアクセスが多かった.またこれも大会史上最も多くのパートナー企業に支えられた大会として,多くのイノベーションプロジェクトが計画・実施された.
このように大会を支えた大量かつ多種多様なテクノロジー及びイノベーションプロジェクトの全体像を正確かつ定量的に記録に残すことは,今後開催される大規模イベントにおいて参考となるだけでなく,歴史的プロジェクトの足跡を記した記録として,今後の産業界の発展にも資するものであると筆者は信じる.そこで本稿では今回の特集の総括として,これまでの大会で導入されてきたテクノロジーの進化の側面も交えて東京2020大会を振り返りつつ,テクノロジー運用の面で大過なく成功することができた要因分析,大会が残したレガシーなどについて考察する.
オリンピック・パラリンピックで導入されてきた情報システムや放送技術は,開催された時代の技術動向やパートナーによる技術提供を受けて進化を遂げてきた(表1)(1).
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード