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2. 通信・無線・放送
東京2020大会における通信ネットワークの概要
Summary of the Tokyo 2020 Games Network
本稿では,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,組織委員会が準備・提供した「通信基盤」及び各種「通信サービス」の概要を俯瞰するとともに,準備・運営において発生した問題を考察することで,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会における通信ネットワーク提供の成果及び課題を総括する.
キーワード:大会用データネットワーク,通信基盤,大会用システム・通信サービス
通信ネットワークは,組織委員会職員を含む大会関係者にとって大会運営に不可欠なものである.これは組織委員会の設立から清算までにわたって設置・運用されていた.特に大会時に利用した通信ネットワークを大会用データネットワークと呼んでいた.ここでは,主としてこの大会用データネットワークを「通信基盤」と「通信サービス」の視点で紹介する.
「通信基盤」とは,大会時には国内2か所のデータセンターをハブとして,オリンピックとパラリンピック利用する43競技会場を含む主要センタ・施設など約70拠点,及び欧州のクラウド・データセンタにある競技関連システム等とをつなぐネットワークであった.競技会場の総数が多く,北海道・東北から関東・東海にわたる広範な範囲に競技会場・施設が分散していることから,大会史上最大規模の通信ネットワークとなった(表1).
競技システム以外にも各競技場・施設等で用いられるシステムは,原則この「通信基盤」を利用した.また当然ながら「通信サービス」も例外ではなく,インターネット・固定電話等もこの上で提供していた.
なお,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)から,大会組織委員会が放送回線用ネットワーク(Broadcast Contribution Network)も提供することとなった.オリンピック放送機構(Olympic Broadcast Services,以下OBS)が準備する映像伝送に関わるシステムにダークファイバあるいは専用線を提供する役割である.これは各競技場で撮影された4Kの映像素材をリアルタイムに国際放送センタまで集めるための中継伝送部分にあたるため,完全冗長かつ地下化という物理的に厳しい条件が原則となっていた.実際,競技会場によっては「地下ルートはあるが2ルート目はなく,2ルート目のための地下管路をどうするか」などの課題が発生し,競技日程や会場までの設備状況によって,地下管路の追加敷設あるいは地上区間のバックアップを増やす(3本目・4本目)などの対応策・緩和処置を実施した.ただし,あくまで各競技会場と国際放送センタ間の帯域提供であることから,本稿では詳細には取り扱わないこととする.なお大会用データネットワークと放送用回線ネットワークの物理構成は図1のとおりである.
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