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2. 通信・無線・放送
大会用データネットワークの運用とその実績
Operation and Performance of the Games Data Network
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会における大会関係者向けのデータネットワークは,非常に重要なインフラストラクチャの一つであり,大会を支える基盤としてこれを安定的に運用することは,円滑な大会運営のために必須である.本稿では,大会用データネットワークの安定運用のために組織化した特別な運用体制とその課題を紹介するとともに,当ネットワークの利用実績や運用実績について分析し,そこから導かれる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の特異性,成功要因について考察し総括する.
キーワード:データネットワーク,オペレーション,TOC,運用体制,インシデント
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)の運営を円滑に行うには,適切なネットワークを整備し提供するだけでなく,常に安定して維持・運用し続けることが非常に重要である.競技の計測システム等もこの通信基盤の上で稼動しており,トラブルは競技そのものや大会運営の成立に重大な影響を与えかねない.大会用データネットワークの安定運用に向けて,正常性監視及びトラブル発生時の迅速・的確な対処により可用性を高めるとともに,ユーザの状況・要件に応じた柔軟な設定変更に対応できるような,万全の保守運用体制が必要であった.
更に,大会では多数の会場において複数の競技が同時進行するという特性から,地理的,スケジュール的にその安定運用が求められる範囲も非常に広く,必然的に大規模な運用体制を要することになる.体制の肥大化により運用レベルが低下することがあってはならない.
これに対応するため,大会の1年以上前からテストイベントなどで大会本番時を見据えた大会用データネットワークの保守運用体制を用意し,トレーニングやメンバー間での知識共有を経て運用プロセスを成熟させた.
大会中には幾つかトラブルが発生したが,大きな事故はなく,保守運用チームと関係メンバーの尽力により安定運用することができた.ここではその保守運用体制について述べ,大会用データネットワークの利用実績や運用実績の観点から分析を行う.
2018年10月には,当時利用していた職員向けネットワークの保守運用サービスを継続しつつ,大会本番でのオペレーションについて具体的な検討を始めた.その後2019年3月,大会用データネットワークの利用開始に伴い本格的な保守運用体制を構築し,習熟度向上・経験の蓄積を図ることとした.
ただ,大会本番で必要なリソースを大会の1年以上前から割り当て,継続するのは特にコストの面で非現実的であったことから,テストイベントやテクノロジーリハーサルの開催を契機に,都度必要な体制へと拡大・縮小した.大会の1年延期もあり,結果として図1のように体制が変動しながら大会に向けた準備を進めていった.
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