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3.情報システム・ディジタルメディア
東京2020大会のシステム基盤
System Platform for the Tokyo 2020 Games
「動いて当たり前」と思われるシステム基盤は,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会でも「絶対に止めることはできない」プレッシャーの中での構築と運用であった.東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では,クラウドサービスを最大限利用しつつ,オリンピック・パラリンピック特有の高いシステム要件をクリアするプライベートクラウドを構築し,クラウドとつなぐ共通基盤を実装してハイブリッドクラウド環境で大会運営を行った.サイバーセキュリティに対するシステム基盤の堅ろう化も徹底的に実施し,大会運営に影響を及ぼすインシデントの発生0件を達成した.東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のシステム基盤を振り返り今後の展望について考察する.
キーワード:システム基盤,ブライベートクラウド,基盤共通設計,基盤セキュリティ
新型コロナウイルス感染症の拡大により史上初の開催が1年延期となった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)は,大会運営のための情報システムは大会期間中停止することなく円滑に稼動し,大会を成功裏に終えることができた.情報システムを稼動させるためのサーバとストレージによって構成されるシステム基盤も,大会運営に影響するインシデントは1件も発生せず,安定運用を実現し,大会の成功に貢献することができた.
本稿では,東京2020大会特有のシステム基盤の課題とその解決策について振り返り,大会によってもたらされたレガシーについて考察する.
オリンピック・パラリンピック大会は,大会ごとにメインのPrimary Data Center(以下,PDC)及び災害対策用のSecondary Data Center(以下,SDC)を開催都市に設置し,大会運営のための情報システムを構築する.また,各競技場にもVenue Data Center(以下,VDC)とOn Venue Result(以下,OVR)を設置して競技計測や配信を行うシステムを配備し,万が一会場間のネットワークにトラブルが発生しても,競技運営だけは継続できる設計で大会運営を行う.
過去大会のシステム基盤は,2016年開催のリオデジャネイロ大会までは基本オンプレミスで構成されていたが,2018年の平昌大会から,グローバルパートナーが保有するクラウド環境を利用するように変遷した(図1).
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