特集 3-4 東京2020大会における業務アプリケーションの開発体制と導入実績

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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3.情報システム・ディジタルメディア

特集 3-4

東京2020大会における業務アプリケーションの開発体制と導入実績

Development System and Introduction Results of Business Applications at the Tokyo 2020 Games

臼井明久 鷲田真一 舘 剛司

臼井明久 鷲田真一 舘 剛司 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジーサービス局

USUI Akihisa, WASHIDA Shinichi, and TACHI Takeshi, Nonmembers, Technology Services Bureau, The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games.

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8別冊 pp.915-920 2022年8月

©電子情報通信学会2022

abstract

 オリンピック・パラリンピックの大会運営業務は多岐にわたるとともに,開催都市ごとに要件が異なる部分も多いため,毎大会,グローバルパートナーから提供される共通的な情報システム(OMS: Olympic Management System,など)以外にも,各組織委員会は,数十に及ぶ業務アプリケーションを設計・開発する必要がある.本稿では,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において採用した開発プラットホーム上で,アジャイルなアプリケーション開発を実現したソフトウェアファクトリーの体制,及び大会期間中の運用実績を紹介する.国際的なスポーツイベントにおける業務アプリケーション開発とはいえ,そこには通常のビジネスにおけるシステム導入でも参考にすべき知見があったと考える.

キーワード:情報システム,アジャイル開発,内製化開発,CoE,DX推進

1.は じ め に

 最近の大会の各組織委員会では,数十に及ぶ業務アプリケーションを効率的に開発・導入するために,既存の開発フレームワークや開発プラットホームが採用されてきた.例えばロンドン2012大会では既存のWebサイト開発パッケージを,リオデジャネイロ2016大会では大手ベンダの開発フレームワークをそれぞれ採用した上で,標準化されたプロセスの下で,オンプレミス環境でのスクラッチ開発を行っていた.またリオデジャネイロ2016大会からは,ソフトウェアファクトリーと称する内製開発部隊を擁し,複数のアプリケーションをまたいで,共通のチームがアプリケーション開発・運用の知見をためていく工夫が導入されていた.

 東京2020組織委員会は,これらの先行事例を分析している中で,導入された業務アプリケーションとしては規模が比較的小規模なもの,大会期間中のみ利用するものが多く,また業務部門の要件が必ずしも早期から確定できていない,といった特徴があることに注目した.つまり,必ずしもオンプレミス環境でのスクラッチ開発が最適とは言えず,むしろ機能モジュールを豊富に備えるPaaS(Platform as a Service)を開発プラットホームとして採用することで,より少ないリソースでアジャイルな開発を実現しやすいと結論付けた.

 その上で,この開発プラットホーム上での内製開発部隊であるソフトウェアファクトリーを立ち上げるに当たり,開発プロジェクト全体の生産性を向上させるとともに,プロジェクト管理を支援するためのアーキテクトチームとして,CoE(Center of Excellence)を設置することとした.

2.ソフトウェアファクトリーとCoE


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