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3.情報システム・ディジタルメディア
感染症対策業務支援システムTokyo 2020 ICONの検討経緯と運用実績
Introduction History and Operational Performance of the Infection Control Business Support System “Tokyo 2020 ICON”
本稿では,新型コロナウイルス感染症による影響(コロナ禍)が残る中で開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において,政府と連携して実施した大会関係者の入国手続きや,各組織の感染症対策の責任者による所属メンバーの体調管理・検査情報管理などを実現するために,急きょ導入された感染症対策業務支援システム(Tokyo 2020 ICON)の開発プロジェクト及び導入実績を振り返り,大会運営の中で最も活用されたディジタルツールの導入プロジェクトの成功要因と反省点について分析する.
キーワード:情報システム,個人情報管理
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)に参加する関係者は,アスリートや競技関係者だけでなく,国内外の放送・メディア関係者や準備・運営に携わるパートナー企業関係者など,総数数十万人に達することが分かっていた.そこで,来日する関係者の健康状況をいかに管理するか,大会期間中の感染症クラスターの発生をいかに防ぐか,などの課題を解決するための検討が,大会延期期間中の2020年夏頃から,政府とも連携しながら本格化した.
一方で,大会延期の決定時(2020年3月24日)は既に大会本番まで残すところ4か月であり,同時点では大会運営で利用する情報システムは既にほぼ完成していた.つまり,感染症対策のためとはいえ,全く新しいシステム設計を大規模かつ短期間で導入することは,情報システム全体の安定運用と情報セキュリティのガバナンスの観点から大きなリスクを伴うことが懸念された.
そこで,政府と連携して感染症対策業務の要件を検討するにあたり,まずは東京2020組織委員会(以下,組織委員会)の既存のシステム基盤の設計をベースとすることを関係者間で合意した.その上で,新たな業務要件を実現するアプリケーションをアジャイルに開発するための体制を準備してプロジェクトに臨んだ.
本稿では,プロジェクトの立ち上げ時の検討経緯からシステム運用期間を通しての実績までを総括する.
コロナ禍が始まって間もない2020年の夏頃には,既に幾つかのイベント主催者や自治体から,特定の会場やイベントにおける感染症クラスター発生防止のために,入場する関係者や観客が事前に健康情報を入力管理できるアプリケーションの開発・導入事例が報告されていた.組織委員会の関係部署でも,そのような事例を参考にしつつ,東京2020大会としての要件について検討を開始した.
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