特集 3-12 東京2020大会のCustomer Relationship Management

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Vol.105 No.8 (2022/8) 目次へ

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3.情報システム・ディジタルメディア

特集 3-12

東京2020大会Customer Relationship Management

Customer Relationship Management for the Tokyo 2020 Games

笛木伸隆 安藤達也 齋藤和生 関口直弘

笛木伸隆 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会マーケティング局

安藤達也 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会デジタルマーケティング室

齋藤和生 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会デジタルマーケティング室

関口直弘 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会デジタルマーケティング室

FUEKI Nobutaka, Nonmember, Marketing Bureau, The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games, ANDO Tatsuya, SAITO Kazuo, and SEKIGUCHI Naohiro, Nonmembers, Digital Marketing Office, The Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games.

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.8別冊 pp.961-968 2022年8月

©電子情報通信学会2022

abstract

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では,観客とつながり東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会との絆を構築することを目指し,Customer Relationship Managementを実践した.オリンピック,パラリンピック公式チケット販売,オフィシャルオンラインショップ販売における統一ID, TOKYO 2020 IDの開設,ID登録者へのコミュニケーションチャネル,My TOKYO 2020, TOKOYO 2020メールマガジンによる情報発信,史上初となるTOKYO CRMとIOC CRMとのデータ連携など,本稿では東京2020大会で実践したCRMの取組みについて紹介する.

キーワード:CRM,TOKYO 2020 ID,My TOKYO 2020,TOKYO 2020メールマガジン,IOC連携,レガシー

1.は じ め に

 本稿では,まず「背景,アプローチ」について,プロジェクトの立ち上げから大会期間までのプロジェクトの経緯を紹介する.次にCustomer Relationship Management(以下,CRM)を実践したチャネル「My TOKYO 2020」,「TOKYO 2020メールマガジン」,各種連携を行った「TOKYO 2020 ID」,また史上初の試みとなった「IOC連携」,最後に東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)終了後引き継がれる「レガシー」について紹介する.

2.背景,アプローチ

2.1 プロジェクト立ち上げ期

 2016年時点,各種調査の結果,東京2020大会での会場観戦意向が高まっていないこととリオデジャネイロ2016大会チケット販売率91%(注1)と低迷したことから,東京2020大会におけるチケット販売が低迷することが危ぶまれた.また,過去大会においてチケットを購入してもスタジアムに来ないという事象があり,同様にTOKYO2020大会においても,チケット購入者の来場が伸び悩む可能性があった.この二つの課題を解決するために,東京2020大会では,「チケットの完売」と「フルスタジアムの実現」を目標とし,CRMプロジェクトを開始した.東京2020大会への観戦意向を高め,潜在的な観客を発掘するための販売促進を行うことと,観客に適切な情報配信を行うこととした.また,過去大会においては,複数のIDが存在し,ユーザ利便性が低かったことを受け,東京2020大会においては,One IDの導入による,情報の一元管理を行うこととした.

 東京2020大会に関する情報提供を行い,関心を持ってもらうこと,イベント等への参加を促し,関与を高めてもらうことをCRMの戦略(図1)とした.関心層の裾野を広げるエンゲージメント活動と大会への関与を高めるSpectator Experience(以下,SPX)活動を両輪で最大化することで,東京2020大会を共に創り上げる仲間を増やすことができるからである.


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