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4.イノベーションプロジェクト・イノベーション施策
未来のスポーツ観戦プロジェクト
Future-oriented Sport Viewing Project
これまで,オリンピック開催とともに,カラー放送,衛星中継,ハイビジョン等の新しい映像技術が試され,実用化されてきた.更に今回は,パンデミック禍での開催となり,ライブ中継により,実際の会場に行ったときに感じる臨場感や一体感を提供できないかが課題となった.
「未来のスポーツ観戦プロジェクト」では,パートナー企業であるNTT,パナソニックと共同でドーム映像配信やKirari! 技術の活用などにより,アスリートのその一瞬にかける緊張感,身体の力強さと美しさ,観客とアスリートの一体感,会場に漂うオリンピックならではの雰囲気など,ありのままの臨場感を伝えるという史上初(組織委員会(調査は,当委員会アドバイザーである和歌山大学尾久土教授の協力のもと実施),NTT調べ)のチャレンジに取り組んだ.
キーワード:ドーム映像,高臨場感,Kirari!
本プロジェクトでは,競技会場に行けない全ての人に,あたかも会場にいるかのような体験を届けることを目的とし,一つには,平面では表現できない,会場の臨場感をドームスクリーンに投影することで表現する技術,二つには,NTTの超高臨場感通信技術を用いて選手のありのままの姿を投影する技術を用いた.本稿では,上記目的に向け,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)において実施された「未来のスポーツ観戦プロジェクト」について,その実施結果をまとめた.
東京2020大会のビジョンである「史上最もイノベーティブな大会」を目指すべく,我々は,Audio & Video分野のイノベーションにおいて検討を重ねる中,レガシーとして残る施策の実施を目標とした.
日本国内には約350のプラネタリウムが存在し,これほど多くの一般向けドームスクリーンを既に保有する国は日本をおいてほかにない.昨今はその投影システムを従来の天体表現のための独自システムから高輝度のプロジェクタに置き換える傾向となっており,和歌山大学尾久土教授により,ドーム映像を投影するこれらのシステムがスポーツ観戦に推奨されていた(1).
我々は,様々な臨場感映像表現を模索した結果,VRグラス等による個人での楽しみの枠を超え,観戦者同士が感動やすばらしさを共有できる映像表現が今後の新しいスポーツ観戦スタイルとして有力であると考え,その実現に向け,尾久土教授の賛同も受け,予備実験の実施,関係者調整の下,「未来のスポーツ観戦プロジェクト・臨場感LIVEビューイング」を企画・推進し,運営を行うことになった.
実施にあたって,コンセプトは「競技会場の観客席での「臨場感・一体感」を身近で安全・安心な場所で体感頂く」ことであった.本プロジェクトでは,臨場感を身近な人と楽しむ一体感と会場の人たちと一緒に応援する一体感までを感じさせるため,10m級のドームスクリーンに競技映像を投影することで,スポーツの速さ・高さ・強さを表現し,カメラを観客席に設置することで会場の臨場感・一体感を表現することを目標とした.
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