小特集 4. 水空合体ドローン

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Vol.105 No.9 (2022/9) 目次へ

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ドローン活用の今

小特集 4.

水空合体ドローン

Combined Underwater and Aerial Drones

西谷明彦 川田亮一 小島淳一 松木友明 吉原貴仁

西谷明彦 (株)KDDI総合研究所KDDI research atelier

川田亮一 正員:シニア会員 (株)KDDI総合研究所KDDI research atelier

小島淳一 (株)KDDI総合研究所KDDI research atelier

松木友明 KDDIスマートドローン株式会社サービス企画部

吉原貴仁 正員:フェロー (株)KDDI総合研究所KDDI research atelier

Akihiko NISHITANI, Junichi KOJIMA, Nonmembers, Ryoichi KAWADA, Senior Member, Kiyohito YOSHIHARA, Fellow (KDDI research atelier, KDDI Research, Inc., Tokyo, 105-0001 Japan), and Tomoaki MATSUKI, Nonmember (Service Planning Department, KDDI SmartDrone Inc., Tokyo, 105-0001 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.9 pp.1114-1120 2022年9月

©電子情報通信学会2022

Abstract

 我が国における大きな課題の一つとして,インフラの老朽化が進んでおり,これには水域にある橋脚やダム,港湾岸壁関係の施設も含まれる.その点検を担う潜水士の数は,高齢化等により減少しつつある.また水産業に目を向けると漁業従事者も減少しており,いけすの見回り等の作業が負担になりつつある.筆者らはこれらの課題の解決を目的として,水空合体ドローンを開発した.目的の水域(海域)まで空中ドローンが水中ドローンを抱えて自動で飛行,着水し,その後水中ドローンを分離,作業完了後に回収して離水,陸上拠点に戻ってくる.水中からの実時間映像伝送が可能で,水中ドローンの位置を知るために音響測位機能を搭載している.本稿では,この世界初のシステムについて説明する.

キーワード:養殖監視,インフラ点検,水中ドローン,空中ドローン,音響測位,映像伝送

1.は じ め に

 水産設備や水域に建設されるインフラ設備,あるいは洋上に停泊する大型船等の水中構造物の点検作業(1)においては,その作業を担う漁業就業者,潜水士の後継者不足(2)(4),潜水作業の危険といった問題があり,作業の効率化や安全確保が課題となっている.これに対し近年,水中ドローンを使って洋上から水中観測を行うといった運用が始まっているが,船で作業エリアを巡回するための時間は余り低減されていない.そこで筆者らは,船舶の運用コストや人件工数を含めた全操業コストの削減と,更なる作業の安全確保を目的として,船を出すことなく無人で迅速に対象水域に向かい,水中の様子を遠隔地に届けることを可能とするため,遠隔管制で飛行から潜航観測までの一連の運用を可能とする,水空合体ドローンを開発した.これは,目的の水域(海域)まで空中ドローンが水中ドローンを抱えて自動で飛行,着水し,その後は水中ドローンを分離,作業完了後に回収して離水,陸上拠点に戻ってくるものである.開発した機能は主に,①空中と水中を共に航行可能とする,②陸地からの水中ドローンの遠隔制御と水中ドローンから陸地への実時間映像伝送を可能とする,③水中ドローンの位置を計測表示可能とする,といった機能である.

 本稿ではこの水空合体ドローンについて説明する.以下,2.でターゲットとする社会課題(水産設備や水域インフラ設備関連)について述べた後,3.ではそれに対する取組みといえるモバイル制御ドローンプラットホームと水中ロボット関連の取組みを紹介する.4.で水空合体ドローンの詳細を説明し,5.で実証結果と今後の展開について説明する.6.でまとめる.

2.水産設備や水域インフラ設備における課題

 表1(a)に我が国の今後メンテナンスが必要となるインフラの割合の推移を示す.このように港湾岸壁関係の施設に限っても今後数千か所の単位で保守作業が必要となってくる.一方でそのような作業に必要な潜水士の数も高齢化等で減少が続いている.また,水産業においても表1(b)に示すように漁業就業者数が減少しており,養殖業においてもいけす監視等の作業の担い手不足により負担が増すととともに,安全確保も重要な課題となっている.


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