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解説
メタバース講演の課題と展望
――東大総長メタバース講演の舞台裏――
Opportunities and Challenges of a Seminar in the Metaverse: Behind the Scenes of Discourse by the University President in a Metaverse
A bstract
COVID-19の感染拡大の影響で大学等における遠隔授業や教育DX等に関する情報を共有することを目的に教育機関DXシンポジウムが継続して開催されている.2022年1月に行われた第45回シンポジウムは,通常の動画像配信に加えて,筆者らが技術協力する形でメタバース空間内で初めて実施された.本メタバース講演では参加者がアバタとなり,複数の参加者が一つのバーチャル空間に一堂に会して,自由に動き回りながら藤井輝夫東京大学総長による講演と学生との対話を視聴可能なイベントであった.本稿では今回の取組みを開催準備から開催当日,そしてアンケート結果を踏まえて振り返るとともに,このメタバース講演がどのような思想に基づいてデザインされたかをまとめ,今後のメタバース講演の課題と展望を解説する.
キーワード:メタバース,アバタ,バーチャルリアリティ,身体性
COVID-19感染拡大に伴い,一般に描かれていたロードマップよりも急速にオンライン化が進み,教育の現場にも大きな影響を与えた.国立情報学研究所(NII)が主催する教育機関DXシンポジウム(大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム)は,大学等における遠隔講義に関する情報共有を目的として2020年3月から精力的に開催されてきた.通常のシンポジウムでは,NIIがホストとなり,国内外からの講演をWebEx Events,YouTube Live,LINE LIVEで配信してきた.
2022年1月に開催された第45回教育機関DXシンポジウムでは,藤井輝夫東京大学総長による講演が予定されていたが,その講演をひょんなことからメタバース上で実施する運びとなった.短期間の準備となったが,講演会場と参加者視聴会場を分けたバーチャル空間で実施するなど,今後のメタバース講演でも活用し得る取組みを実施した.そこで,本稿では教育機関DXシンポジウムで初めての取組みとなったメタバース会場の準備から当日の運営,そしてアンケート結果を踏まえて振り返り,ソーシャルVR・メタバース空間におけるシンポジウム開催の課題と展望をまとめる.
第45回のシンポジウムでは通常どおりの動画像配信と,新たにVR空間からの配信が並行して実施された.メタバース空間では深海を表現した講演会場(cluster上)に,藤井総長と喜連川優NII所長がフォトリアルな3Dアバタで登場し,藤井総長による「多様性の海へ:対話が創造する未来」と題した講演が行われた.その後,コロナ禍に公衆衛生の分野で活躍し,2020年度総長大賞を受賞した東京大学大学院医学系研究科修了生の角野香織さんと同研究科博士課程の大野昴紀さんによるプレゼンが行われ,メタバース空間で総長と学生が対話をする形となった(図1).続いて相澤清晴東大VRセンター長から,今回のVR講演の裏側についての紹介があった.
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