解説 多様な広がりが期待される光無線給電

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 解説 

多様な広がりが期待される光無線給電

Optical Wireless Power Transmission Expected to Expand Various Applications

宮本智之

宮本智之 正員:シニア会員 東京工業大学科学技術創成研究院

Tomoyuki MIYAMOTO, Senior Member (Institute of Innovative Research, Tokyo Institute of Technology, Yokohama-shi, 226-8503 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.9 pp.1142-1149 2022年9月

©電子情報通信学会2022

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 光無線給電は光源から出射される光ビームと太陽電池を基本とする無線給電方式である.既存の無線給電方式に比べて長距離への給電や電磁雑音の影響を与えないといった優れた特徴を持つ.なお,その技術要素から高い実現性はあると言えるが,最近になり研究開発が活性化している新しい方式・分野である.光源の出力によりmWからkWの範囲の給電を,光ビームの届くcmからkmの範囲の距離まで,室内,地上,空中,水中,宇宙,体内など様々に応用が可能である.本稿では,その原理,特徴,課題とともに,筆者らの取組みを含めた最新の動向を解説する.

キーワード:無線給電,光無線給電,レーザ,太陽電池,効率

1.は じ め に

 機器には給電が必須であり,通常は配線かバッテリーを利用する.配線はその敷設・接続が課題と言える.バッテリーは利用時には無線だが充電や交換の負荷のほか,その重量・体積・コスト・安全性も課題である.エネルギーハーベスティング(環境発電)(用語)も給電手法だが微弱電力のため応用が制限される.また,配線を除くと,機器の省電力化だけでは,稼動時間の多少の延長や機能の多少の拡充は可能なものの,連続稼動や本質的に大きなエネルギーを要する機能の導入や機能の高度化は難しい.

 以上のように給電には課題が多い.そこで無線給電(用語)が期待されている.無線給電は配線敷設や接続の負荷はなく,また常時に十分な電力を給電することができる.このため単に配線を置き換えるだけでなく,給電あるいは電気の利用を意識させない新しい応用や新しいサービスなど,新たな社会への変革の鍵となり得る.

 本稿では,この無線給電方式の中で近年注目を集めている光ビームを用いる光無線給電(用語)方式について,その技術の原理,特徴,課題,また,筆者らの取組みを含めた最新の動向を解説する.

2.光無線給電とは

2.1 既存の無線給電方式

 表1に各種の給電方式の特徴をまとめた.ICカードや携帯端末に搭載のQi方式に用いられる電磁誘導方式はよく知られた無線給電方式である.これはトランスに相当するが,コンデンサに相当する電界方式もあり,これらは最適条件で90%を超える高い効率給電が可能である.ただし,結合方式やコネクタレス方式と呼ばれるように,数cm以下の極短距離の給電となる.これら方式に,MITにより2007年に発明された共鳴(共振)回路を付与して給電距離を数十cm程度まで拡張する方式も実用に至っているが,数m以上には対応できない.

表1 各種無線給電方式の特徴


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