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解説
作業現場におけるヒューマンエラーポテンシャルの推定
Human-error-potential Estimation on Shop Floors
A bstract
IoTや産業用ロボットなどの技術革新により,製造や保守などの作業現場の一部ではオートメーション化が着実に進んでいる一方で,特に多品種少量の製造や屋外での保守作業などにおいては,依然として人作業への依存が残る作業現場が多い.そのような現場においては,常にヒューマンエラーの発生リスクが存在し,その低減は現場において最も重要な課題の一つであると言える.そこで本稿では,作業現場におけるヒューマンエラーの低減のため,まずその第一歩としてそれが発生するリスクの大きさ(ヒューマンエラーポテンシャル)をセンシングにより定量化する試みについて紹介する.
キーワード:ヒューマンエラー,ウェアラブルセンサ,生体データ,機械学習
少子高齢化が進行する日本や欧州では,高い技能を有する熟練労働者の減少が産業競争力の維持・向上への課題となって久しい.特に,人依存性の高い現場では熟練労働者の減少によりヒューマンエラーが増加することが懸念され,生産性や品質の低下だけでなく作業現場における重大事故やメガリコールが事業上の大きなリスクとして認識されるようになっている.
例えば,国土交通省によるリコール届出内容の分析結果(1)を見ると,ヒューマンエラーが多くのリコールの発生の直接的・間接的原因となっていることが分かる.ヒューマンエラーを狭い意味で捉えられると「作業員のミス」の7.2%にすぎないが,その他の原因についても「品質の見込み違い」「評価・テストや図面・マニュアル,管理などの不備・不十分」「不適切な工程管理」「プログラムミス」など,ほとんどの場合においてヒューマンエラーが何らかの要因となっていることが分かる.
このように品質や安全に重大な影響をもたらすヒューマンエラーについては,その低減を目指して古くから多くの研究がなされてきた.
その一つの方向性としては,過去に起こったヒューマンエラーをその種別や原因によって分類し,系統的に理解することを目指した研究がある.代表的なものとして,Swain & Guttmann(2)による,Omission error(やり忘れ)とCommission error(やり間違い.更に細かく分類される)の分類や,Reason(3)によるslip(行動目的は正しいものの実行に移す段階で計画と異なる行動をしてしまうというエラー),lapse(行動実行中になすべきことを忘れてしまうというエラー),mistake(行動の目的そのものを誤ってしまうエラー)の分類などがある.また,Elwyn Edwardによって提唱され,Frank H. Hawkinsが発展させたSHELLモデル(4)では,ヒューマンエラーは作業員本人(Livewareと呼ばれる)だけが原因となって発生するものではなく,その作業員を取り巻くSoftware,Hardware,Environment,Liveware(=周囲の人)との間に,何らかの齟齬が発生した場合に発生するものとしてモデル化している.
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