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解説
量子アニーリングマシンの活用と今後の展望
Applications and Future Perspectives of Quantum Annealing
A bstract
量子アニーリングと呼ばれる組合せ最適化問題を解くヒューリスティック手法がある.カナダのスタートアップ企業D-Wave Systems社が実現し,商用販売を開始した後,多くの耳目を集め今日に至る.物理学で盛んに研究されている微視的なスケールにおける現象を解明する量子力学にその起源があるため,どうしても門外漢や専門外の人間からすると遠くに置いておきたいものでありつつ,興味のあるキーワードであるから知りたいことはある.そうした読者に向けて歴史的経緯も含め近年の,特に製造業向けの応用についての研究開発成果について紹介する.
キーワード:量子アニーリング,組合せ最適化問題,スケジューリング
量子アニーリングは門脇・西森の両氏が量子揺らぎの性質を利用して,組合せ最適化問題を解くために提案された手法(1)である.歴史的に遡れば,確率的な手法で組合せ最適化問題を解くシミュレーテッドアニーリング(2)の系譜を持つ手法である.シミュレーテッドアニーリングは今日でも利用される,古典コンピュータ上で動作するアルゴリズムである.名前にあるとおり,シミュレーションという気持ちがあり,磁石の中でのスピンの向きの変化を模倣するものである.磁石と組合せ最適化問題は一見何の関係もないように思われるが,その磁石を支配するエネルギー関数として,統計物理という物理学の一分野では,イジング模型と呼ばれる数理モデルが長く研究されてきた.その形は以下に示すとおり
(1)
という格好を持つ.このときはスピンの上下の向きを示す2値の変数であり,は場所を示すインデックスである.この形を見て,他分野の人はどう思うだろうか.全く知らない物理の世界の話として始めたのだから,異なる分野の読者にとっては関係のない話と思われる向きもあるだろう.しかしある分野の人は,見慣れた形として捉えることもできる.数式を利用して物事を語るのは,読者の数を減らすからやめなさい.そうした編集者の声が聞こえてくる.しかしそれに真っ向から反対するのが本稿である.数式は考察に自由を与える.この数式には壁を越える力がある.物理で生まれたこの式は,離れた最適化分野における式と等価である.最適化の分野では2次計画問題と呼ばれる最適化問題のクラスがあり,その際に最小化するコスト関数として,以下の形を持つものを想定する.
(2)
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