講演 社会インフラとしての光ファイバ通信網の進展――日本国際賞の対象を中心に――

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講演 社会インフラとしての光ファイバ通信網の進展――日本国際賞の対象を中心に―― Progress of Fiber-optic Network as Social Infrastructure 萩本和男

萩本和男 名誉員:フェロー 国立研究開発法人情報通信研究機構

Kazuo HAGIMOTO, Fellow, Honorary Member (National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.12 pp.1063-1072 2023年12月

©電子情報通信学会2023

1.序     文

 2023年4月13日に,天皇皇后両陛下御臨席の下,日本国際賞を中沢正隆先生と受賞した.思い掛けない大きな喜びであったが,とりわけ授賞業績が「半導体レーザー励起光増幅器の開発を中心とする光ファイバ網の長距離大容量化への顕著な貢献」ということで,光増幅器(エルビウム添加ファイバ増幅器:EDFA)を中心にした光ファイバ通信網の高度化に具体的に貢献した点に焦点を当てて頂いたことに,驚きながらも多くの関係者と喜びを分かち合うことができた.EDFAの実用化により,光ファイバ通信システムの長距離大容量化は大きな前進を図ることになった.ちょうど平成のスタート(1989年)とともに約30年余りにわたり,着実な進展を遂げてきたように見えるかもしれないが,そのときどきのターニングポイントがあり,多くの関係者に支えられていたことを改めて実感している.末松安晴先生の著書「光ファイバ通信入門」(1)に触発されて,1977年に東工大の内藤喜之研究室に入れてもらい,光集積回路に欠かせない光非相反回路の研究に関わりながら,暗中模索にもがき,修士課程を終えて,日本電信電話公社(電電公社,現NTT)に入社した.大学の研究内容が直ちに役に立つとは思っていなかったが,コンセプトにしろ,導波路回路の基礎理論,YIG(光学異方性結晶)の特徴など,キー技術はこんなにも光伝送回路を仕上げていくのに,深く関係し,私を支えてくれたことに,まず,驚いた.何よりも新しいことへのチャレンジに,期待と不安が繰り返される中での「もがき方」を学んだことが大きな収穫だった.その後も,未経験のエリアに踏み込むたびに,かつての経験に照らしながら,原理原則とゴールを意識した上で,目の前のことをただ一生懸命やってきた.それでも取り組んで行く中で,本質的な課題とその対処が多少なりできたことは,考え方に普遍性が育まれていたのだと感じ,大学の研究室で,内藤先生からフィロソフィーとかライフワークとか創造的な取組みについて,御指導頂いたことが人生を豊かに導いてくれたように思う.個人的には,常にタイトロープを節目節目で多くの関係者に御指導・御支援頂くことで,落ちそうで落ちない取組みを続けられたことに感謝しながら,改めて振り返ってみたい.


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