小特集 5. 学会・研究会における発達障害がある/可能性がある人への合理的配慮等の提供

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Vol.106 No.12 (2023/12) 目次へ

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小特集 5.

学会・研究会における発達障害がある/可能性がある人への合理的配慮等の提供

Provision of Reasonable Accommodations, for Researchers with(or Possibly with)Developmental Disabilities at Academic and Research Conferences

苅田知則 今野 順

苅田知則 愛媛大学教育学部特別支援教育

今野 順 愛媛大学教育学部特別支援教育

Tomonori KARITA and Jun KONNO, Nonmembers (Faculty of Education, Ehime University, Matsuyama-shi, 790-8577 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.12 pp.1132-1136 2023年12月

©電子情報通信学会2023

Abstract

 発達障害には,自閉スペクトラム症(ASD),限局性学習症/読み書き困難(SLD, Dyslexia/Dysgraphia),注意欠如・多動症(ADHD),感覚過敏(HSP)等,多様な症状・困難が含まれる.厚生労働省の調査によると,発達障害の診断数は年々増加しており,2016年には48.1万人と報告されている.また,発達障害がある,若しくはその可能性がある子供の数も増加傾向を示しており,文部科学省の報告によると,2022年現在,通常の学級には約8.8%の割合で,発達障害の可能性がある児童生徒が在籍している.一方で,発達障害がある/可能性がある人は,全般的な知的発達に問題はなく,自らが興味関心を抱く領域・特定の領域については極めて高い能力を発揮する場合もある.過去に極めて優秀な成果を残した研究者の中には,現代の診断基準を適用するならば,発達障害と診断される可能性がある人も多数含まれる.このように,研究・学術領域と発達障害は親和性が高く,義務教育段階の割合よりも高い割合での参加も想定される.本稿では,障害の有無にかかわらず,多様な研究者が効果的に学会や研究会に参加・研究成果の公開を行うために,想定される発達障害がある/可能性がある人への配慮等を概説・例示する.

キーワード:発達障害,自閉スペクトラム症,読み書き困難,感覚過敏

1.発達障害について・日本の状況

 発達障害とは,発達障害者支援法第二条(定義)(1)において「自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されている.発達障害は「発達障害がない状態」から「発達障害がある(発達障害と診断される)状態」までの間にしきい値(区切り)がない「スペクトル(spectrum:連続体,範囲)」として理解する必要があると指摘されている.すなわち,「発達障害がない人」と「発達障害がある人」を質的に異なるものと分類するのではなく,「発達障害」の行動特徴・認知特性等は誰もが有していると考える必要がある.その上で,「発達障害がない」と自他共に考えており,実生活・学習等において困難が生じていない状態にある人もいれば,困難や混乱等が生じ始めて「発達障害があるのではないか」と考えられる状態,困難・混乱が大きくなり医療・専門機関等において「発達障害と診断される」状態にある人もいると考えるべきである.

 また,文部科学省(2022)によると,義務教育段階の全児童生徒数は減少傾向にあるが,通常の学級には発達障害の可能性がある児童生徒が8.8%程度在籍しており,その割合は過去の調査結果よりも増加傾向を示している(2)


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