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海外のハイテク集積地からのレポートシリーズ
解説
シンガポールで研究者として働く
What Is It Like to Work as a Scientist in Singapore?
A bstract
私は2019年から,友人の紹介でシンガポールへ移住し,国立研究所A*STAR(Agency for Science, Technology and Research)で研究者として働いている.本稿では,これまでの4年強のシンガポールでの生活を通じて,そこでの研究の仕方や,生活がどうであるかなど,私が感じたことについて述べる.また海外での留学や就職に少しでも興味のある方向けに,A*STARが提供している奨学金について述べる.更にシンガポールがどのような国であるかを,気候,行政,言語,給与水準,税金,公共交通,飲食,住居,教育などの項目ごとに特筆したい事柄をまとめる.
キーワード:体験記,海外生活,海外研究機関,シンガポール
私は2016年に慶應義塾大学大学院理工学研究科において博士号を取得し,その後同大学で特任助教及び助教を務めた.学位取得後3年目の2018年はちょうど30歳になった年で,それまでも海外に興味はあったものの,チャンスや自信もなく国内にいたが,20代から30代になると以前に増して海外で働きたいと思うようになった.ちょうどその1,2年前に,所属研究室でポスドクをされていた方がシンガポールの国立研究所,A*STAR(Agency for Science, Technology and Research)の研究所に就職されていたことを思い出し(図1),彼に連絡をしてみたところ,いま募集してますよとのことだったので彼のボス経由でオンラインで2回の面接を受け,無事に採用され,2019年からシンガポールに移住した.
A*STARはMTI(Ministry of Trade & Industry)という省庁の傘下にあり,主にBMRC(Biomedical Research Council)というバイオメディカル系の研究所群とSERC(Science & Engineering Research Council)という理工学系の研究所群に分かれている.私はSERCに属するIHPC(Institute of High Performance Computing)という研究所に所属している(1).名前から何となく推測がつくとおり,コンピュータサイエンス系の研究を行う組織である.AI,量子コンピューティング,分散コンピューティング(ブロックチェーンやフェデレーテッドラーニング),モデリングとシミュレーションなどを強みとしている.ちなみに私の所属する電子情報通信学会の通信ソサイエティの系統でいくと,もう一つI2R(Institute for Infocomm Research)という同じくSERCに属す研究所があり,こちらは通信,ネットワーク,IoT(Internet of Things),サイバーセキュリティ,AIなどに強みを持っている.図2はA*STARの入る一つのビルである.
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