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電子情報通信技術のもたらす社会・個人への影響――倫理綱領改定に向けて――
小特集 4.
電子情報通信技術とCSR・SDGs・ESG
――倫理綱領における議論の経緯――
Electronics, Information and Communication Technology and CSR, SDGs and ESG for Code of Ethics
Abstract
本会の倫理綱領は法的拘束力を伴ういわゆるハードローではない.他方,倫理綱領は関係する技術者等の行動の指針になるという意味で,いわゆるソフトローとなる.ソフトローについては,近時,大きく展開しており,倫理綱領の改定にあたってはその展開を視野に入れる必要がある.本稿は企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility),持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)及びESG(Environmental, Social and Governance)を概観し,今回の倫理綱領の改定との関係を検討する.
キーワード:倫理綱領,ソフトロー,CSR,SDGs,ESG
本稿では今般の倫理綱領の改定(倫理綱領及び行動指針の改定案を以下「倫理綱領改定案等」と言う)と企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility),持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)及び環境・社会・(企業)統治(ESG: Environmental, Social and Governance)(以下「CSR等」と呼ぶ)との関係を扱う.
CSR等は後述のようにソフトロー(soft law)ではあるものの,誰もが納得するような(新たな)価値を実現するための規範である.他方,「遵守」ないし「期待」のために,これらの価値を達成する一定の仕組み(本稿では「エンフォースメント」と呼ぶことがある)がある.では,倫理綱領における価値やエンフォースメントはこれらと異なるのだろうか,また,異なる場合,倫理綱領の改定においてこれらの展開を取り込むべきなのだろうか.これが筆者が今般の改定にあたり抱いた疑問である.そして,この問いに答えるには本会の倫理綱領に関する過去の議論を振り返る必要もある.そこで,本稿では,まず,CSR等の意義を確認し,次いで,従来の倫理綱領における議論を振り返り,今般の改定における筆者の心持ちをお伝えする.
CSRとは企業行動の社会性を確保する規範で,その要素は,説明責任,予防原則及び透明性から成るとされる(文献(1)10・pp.229-230.参照,文献(2)pp.200-201).
CSRの内容を定める代表的な原則が国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」である(文献(3).日本語訳として,文献(4)).指導原則は全ての企業に人権の尊重を求め(指導原則11),「人権への悪影響を特定し,防止し,緩和し及びその対処方法を説明するために,事業者は人権デュー・デリジェンスを実施する必要がある.」として人権デュー・デリジェンス(Human Rights Due Diligence:人権DD)の実施を求める(指導原則17).こういった国際的な動きを受け,日本政府も2020年「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」を策定している(5).
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