小特集 6. AIのELSIと研究倫理

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電子情報通信技術のもたらす社会・個人への影響――倫理綱領改定に向けて――

小特集 6.

AIのELSIと研究倫理

ELSI of AI and Research Ethics

久木田水生

久木田水生 名古屋大学大学院情報学研究科社会情報学専攻

Minao KUKITA, Nonmember (Graduate School of Informatics, Nagoya University, Nagoya-shi, 464-8601 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.3 pp.203-206 2023年3月


本記事の著作権は著者に帰属します.

Abstract

 人工知能は現在,急速に発展しているテクノロジーであり,社会の様々な場面での活用が進んでいる.しかしその一方で,人工知能の普及は,企業や政府機関などによる過剰なデータの収集・濫用,バイアスを持った個人の評価を引き起こすなど,倫理的・法的な面で様々な懸念もある.本稿では事例に即しながら,研究倫理の観点から研究者がそういった問題にどのように向き合うべきかを論じる.

キーワード:機械学習,ビッグデータ,バイアス,公平性

1.は じ め に

 人工知能は現在,急速に発展しているテクノロジーであり,社会の様々な場面での活用が進んでいる.しかしその一方で,人工知能の普及は,企業や政府機関などによる過剰なデータの収集・濫用,バイアスを持った個人の評価を引き起こすなど,人々の権利を侵害したり,不平等や格差を助長させたりするようにも使われており,倫理的・法的な面で懸念がある.本稿ではELSI(Ethical, Legal and Social Issues)の観点から問題となるような人工知能利用の事例に即しながら,人工知能研究者がそれに対して研究倫理の観点からどのように向き合うべきかを論じる.

2.人工知能に対する懸念の変遷

 2010年代の初頭,人工知能の技術の急激な発展に伴い,人工知能に対して過剰な期待を抱く人々,誇大なビジョンを喧伝する人々が現れた.人間を超えた人工知能は,更に優れた知能を生み出し,その知能が更に優れた知能を生み出す.このプロセスが繰り返されることで知能の爆発的な増大が起こる.そのような知能は人間と社会の抱えるおよそあらゆる問題を解決してくれ,ついには肉体の限界や死さえも克服するだろう.


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