小特集 7. 電子情報流通に不可欠な著作権保護技術とブロックチェーン技術の倫理的観点からの考察

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.106 No.3 (2023/3) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


電子情報通信技術のもたらす社会・個人への影響――倫理綱領改定に向けて――

小特集 7.

電子情報流通に不可欠な著作権保護技術とブロックチェーン技術の倫理的観点からの考察

An Ethical Perspective on Copyright Protection Technology and Blockchain Technology Essential for Electronic Information Distribution

宮田純子 岡田仁志 木下宏揚

宮田純子 正員 芝浦工業大学工学部情報通信工学科

岡田仁志 正員 国立情報学研究所情報社会相関研究系

木下宏揚 正員 神奈川大学工学部電気電子情報工学科

Sumiko MIYATA, Member (College of Engineering, Shibaura Institute of Technology, Tokyo, 135-8548 Japan), Hitoshi OKADA, Member (Information and Society Research Division, National Institute of Informatics, Tokyo, 101-8430 Japan), and Hirotsugu KINOSHITA, Member (Faculty of Engineering, Kanagawa University, Yokohama-shi, 221-8686 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.3 pp.207-210 2023年3月

©電子情報通信学会2023

Abstract

 ネットワーク上に流通するディジタルコンテンツの普及に伴い,コンテンツや著作権の保護が必要不可欠となっているために,コンテンツを保護する手段であるアクセス制御と権利者を示す証拠を残す電子透かし技術の必要性が増している.しかし,証拠を残すための技術は,個人情報を透かし情報として利用することが例に挙げられるように,倫理やモラルに訴える割合が多い.近年,アクセス制御や電子透かしを補完する技術として,NFT(Non-Fungible Token)やスマートプロパティ,スマートコントラクトなどのブロックチェーンに基づく技術を利用するケースが増えている.本稿ではディジタル著作権保護の基盤技術となっている電子透かしとアクセス制御,ブロックチェーンについて概要を述べ,問題点を倫理的観点から考察する.

キーワード:著作権保護技術,アクセス制御,電子透かし,ブロックチェーン

1.は じ め に

 ネットワーク上に流通するディジタルコンテンツの普及に伴い,海賊版サイトによる著作権法違反やコミックマーケットにおけるコンテンツの不適切な二次利用の問題などに起因して,コンテンツや著作権の保護が必要不可欠となっている(1).コンテンツを保護する手段としては,アクセス制御や暗号化など不正なコンテンツの利用を防止する秘匿による方法と,ディジタルフォレンジックなど権利者を示す証拠を残す方法がある(2).コンテンツデータの秘匿による方法はアクセス権がない者に対しては確実にコンテンツを保護できるが,一旦アクセス権を付与するとその後の保護が困難な上,ユーザの利便性を制限する.一方,証拠を残す方法はアクセスの制限ができない反面,利便性が高くコンテンツの権利者や裁判所などの第三者がコンテンツの利用が正しく運用されていることを確認可能となる.権利者とユーザ双方の利益のためには秘匿と証拠をバランス良く使用することが,結果として安全性と利便性を兼ね備えた次世代のディジタルコンテンツ著作権管理システムの構築につながると考えられている.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。