小特集 2-1 学会活動での子供向け科学教育イベントの意義と魅力

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Vol.106 No.4 (2023/4) 目次へ

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「今,だからこそ!」電子工作のすすめ――未来の技術者を育てる電子工作ブームを再び――
2. 教育における電子工作

小特集 2-1

学会活動での子供向け科学教育イベントの意義と魅力

Significance and Attractiveness of Science Education Events for Children as Society Activities

石垣雄太朗

石垣雄太朗 正員 (株)東芝研究開発センター

Yutaro ISHIGAKI, Member (Corporate Research & Development Center, Toshiba Corporation, Kawasaki-shi, 212-8582 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.4 pp.278-282 2023年4月

©電子情報通信学会2023

Abstract

 学会主催の子供向け科学教育イベントは学会会員が主体となって運営するため,子供が科学技術に対する関心を深めるだけでなく研究者・技術者のイメージをつかみ,将来の目標や自身のキャリアについて考えるきっかけになる場としても期待できる.また,イベントの運営を通じて会員間のネットワーキングの機会にもなるという魅力もある.本稿では,学会主催の子供向けイベントとして電子楽器作成イベントや電子工作に関するウェビナーについて教材や開催時のポイントなどとともに紹介し,更なる学会主催子供向けイベントの今後の広がりの可能性について述べる.

キーワード:STEAM教育,学会活動,電子工作

1.は じ め に

 ICT技術の目まぐるしい進歩により科学技術開発の国際競争は激しさを増しており,科学技術人材の育成は急務となっている.超スマート社会とも呼ばれるSociety 5.0(用語)では産業構造が大きく変わり,それに伴い競争の激化が予想される.例えばプラットホームビジネスの発展により,様々な分野を巻き込み拡大する性質から,経済社会における勝者・敗者の二極化が進む可能性が示唆されている(1).また,既存の仕事の一部がAIやロボットに置き換えられることにより,人間に求められるスキルもこれらの技術を駆使できる能力へと一部変容していくことが予想される.このような社会を生き抜き,そして世界をけん引できるような人材をより多く育てるため,子供たちに質の高い科学技術教育を提供していくことが望まれる.

 Society 5.0を見据えた教育として,STEAM教育(用語)と呼ばれる分野横断型の科学技術教育の必要性を文部科学省が挙げている(1).STEAM教育とは,Science, Technology, Engineering, Mathematics(STEM)にArts(近年では芸術というよりLiberal Artsという意味が強い)を加えた実践的な科学技術教育である(2).Society 5.0においては,AI・ロボティクス,IoT(Internet of Things)などの技術を用いた種々の社会課題解決のため,これまで以上に異分野との共創による新たな価値・ビジネスの創出が重要になり,分野を横断した実践的な視点や探究力を養うことも必要になる.そのため,Society 5.0を見据えた学校教育においては,教師とは異なる知見を持つ団体や民間事業者と連携していくモデルへの転換が求められる(1).すなわちSTEAM教育を推進していくには,教師だけではカバーが難しい,より深い知識や実践的な経験を持つ多様な人材が教育に携わることや,学校以外の学びの場が提供されることが望まれる.その一例として,科学技術分野の多様な専門家を擁する学会が,STEAM教育に貢献することは社会的にも大きな意義がある.例えば,本会でも子供の科学教室活動(3)が活発に行われており,IEEE Japan CouncilでもEducational Activities(JC EA)Groupが立ち上がるなど,日本における学会主催のSTEAM教育の実施は広がりを見せている.


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