小特集 3-3 Maker Faire――イベントを通じて広がる電子工作の楽しさの輪――

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Vol.106 No.4 (2023/4) 目次へ

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「今,だからこそ!」電子工作のすすめ――未来の技術者を育てる電子工作ブームを再び――
3. 電子工作の輪を広げ支える組織

小特集 3-3

Maker Faire

――イベントを通じて広がる電子工作の楽しさの輪――

Maker Faire: Pleasure of Electronics DIY Spreading through Events

小林 茂

小林 茂 情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科

Shigeru KOBAYASHI, Nonmember (Department of Media Creation, Institute of Advanced Media Arts and Sciences, Ogaki-shi, 503-0006 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.4 pp.304-309 2023年4月


本記事の著作権は著者に帰属します.

Abstract

 メイカームーブメントの祭典「Maker Faire」は,アメリカで2006年に始まり,日本では前身となるイベントを含めると2008年から開催されている.Maker Faireには,テクノロジーを身近なものとして捉え,自在に解釈して制作した作品群とその制作者「メイカー」たちが集まり,つくることの楽しさが次々と伝搬し,様々な領域で活動する人々が交差する.本稿ではこのMaker Faireについて,これまでの経緯を紹介し,2022年9月の回から〈民主化〉〈再発明〉〈交差の促し〉をキーワードに幾つかを取り上げて紹介する.

キーワード:Maker Faire,メイカー,メイカームーブメント,テクノロジー,DIY

1.は じ め に

 2022年9月最初の週末,東京都江東区の東京ビッグサイトで「Maker Faire Tokyo 2022」というイベントが開催された(図1).会場には300組弱の出展者と多くの来場者が集まり,電子工作,ロボティクス,バイオテクノロジー,モビリティ,サイエンスなど,様々な分野の人々がそれぞれのつくった「作品」を見せ合い,活気に満ちあふれていた.これより,Maker Faireとはどんなイベントなのか,そこにどんな可能性を見いだせるのかについて紹介していきたい.

図1 Maker Faire Tokyo 2022の様子(提供:(株)オライリー・ジャパン,撮影:ただ(ゆかい))

2.Maker Faireとは

2.1 Make・メイカー・Maker Faire

 まず,Maker Faireについての短い歴史をみてみよう.Maker Faireが開催されるようになったきっかけは,2005年2月に創刊号が発行されたアメリカの雑誌Make:である.Make:の誌面には,電子工作,ロボティクス,バイオテクノロジー,ディジタルファブリケーションなど様々な話題が混在し,読者が実際に制作する際のヒントとなる多彩なDIYプロジェクトが掲載されている.そのほとんどは,身近かつ安価で入手できる材料や道具を用いたものであり,廃棄品を部品として流用するアイデアが紹介されることもしばしばである.

 Make:誌を創刊したデール・ダハティ(Dale Dougherty)は,この雑誌の読者たちを指す言葉としてメイカー(Maker)を使い始めた.ここでのメイカーは,カタカナ英語の「メーカ」に相当する英語のmanufacturerとは異なる概念だ.ダハティは,2016年の著書「私たちはみなメイカーだ」において,メイカーという概念を次のように紹介している(文献(1),p.22).


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