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5Gが地方創生や地域課題解決に向けた基盤技術として期待されている中,その恩恵を享受可能な通信エリアをあらゆる場所に拡張していくことが,6Gにおける重要課題の一つである.これまでの移動通信ネットワークでは十分にカバーできなかった「空・海・宇宙」を含むあらゆる場所へのカバレージ拡張の実現に向けては,衛星や高高度プラットホーム(HAPS: High Altitude Platform Station)を用いた非地上系ネットワーク(NTN: Non-terrestrial Network)が注目されている.本稿では,HAPSを用いた無線通信システムのユースケースとネットワーク構成について概説し,HAPS実用化に向けた研究開発の取組みを紹介する.
キーワード:HAPS,NTN,ユースケース,ネットワーク構成
5G(第5世代移動通信システム)の高度化(5G Evolution)及び6G(第6世代移動通信システム)の時代におけるコミュニケーション基盤として,静止軌道衛星(GEO: Geostationary Orbit satellite),低軌道衛星(LEO: Low Earth Orbit satellite),及び高高度プラットホーム(HAPS: High Altitude Platform Station)を用いた非地上系ネットワーク(NTN: Non-terrestrial Network)が注目されている.図1のように,GEO,LEO,HAPSを利用するNTNによって,これまでの移動通信ネットワークでは十分にカバーできなかった山間,へき地,海上,空,宇宙空間などを含むあらゆる場所への「超カバレージ拡張」の実現が期待されている(1).
超カバレージ拡張の早期実現に向けて,HAPSを用いた通信サービスの実現が期待されている.HAPSは,高度約20kmで一定の場所に常駐することができ,地上に半径約50~100kmのカバレージエリアを形成できる.国内でもミレニアムプロジェクトの一つとして1999年から「成層圏プラットホーム」の研究開発が行われていた(2).当時は事業化に至らなかったものの,HAPS機体の製造技術発展により,昨今再注目されている.HAPSはLEOと比較しても更に低高度であるため,セル半径にもよるが片道電波伝搬時間約0.1ms程度と地上ネットワークと遜色ない低遅延な通信を実現できる.したがって,災害対策はもちろんのこと,5G Evolution & 6Gで想定される多くの産業向けユースケースにも有効であると期待されている.携帯通信事業者にとっては,地上基地局整備によるカバレージ拡張と並行してHAPSを組み合わせることで,エリアごとに必要な通信品質を提供しながら,モバイルネットワーク全体としてのコスト・エネルギー効率を改善する点でもHAPSは有望である.
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