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光を含む電磁波を海中で伝搬させることは困難である.海中における伝搬技術は音波利用が主流であり,従来,海中音波伝搬について多様な取組みがされてきた.一方で近年,小形・高性能な光学技術が実用化されたことで,光学を海中利用する取組みが積極的に進められている.その中,海中光ワイヤレス通信の注目度は高く,その実用化が期待される代表的な海中光学技術となる.本稿では,レーザ光を適用した高速海中光ワイヤレス通信に関する取組みについて説明し,海中における光学利用の展望について触れる.
キーワード:海中光ワイヤレス通信,海中レーザ光通信,1Gbit/s×100m海中無線通信,海中光学
海中における伝搬技術はこれまで,音波伝搬を主力としてきた.音波は海中において遠達性が保障される唯一の手段であり,海水を伝搬場とした音波を,いかに効率的に伝搬させるかに注力する.これにより,海中における通信,測距,可視化,速度検出などは,海中音波伝搬技術により成立させてきた.一方で,マルチパスや音響干渉などの環境要因の影響に対しては比較的にぜい弱といえる.併せて,海中環境下で実用可能な周波数域も限られており,音波を海中通信に利用する場合,通信速度は比較的に低速となる.一般的な商用の海中音響通信装置では,数kbit/s~数十kbit/sレベルの通信速度が通常であり,先進性の高い試験的な取組みにおいても数百kbit/s~数Mbit/sレベルの通信速度となる.しかし,海中音響通信は,長距離・広範囲な通信距離/通信範囲を確保できる海中利用において最大の利点を有し,遠方に対する情報伝達手段としては最も効果的である.
その中,海中・海底におけるセンシング技術は急速に進んでおり,海中・海底の状態を高精度かつ大容量データにて提供する手段が一般化されつつある.これに応じて,それらセンシング技術を組み込む様々な海中プラットホームの実用化も進んでおり,これらを効果的に展開する統合化された海洋観測システムの構築が期待される(図1).海中・海底の状況をセンシングした結果として得られる多様な情報を,各プラットホーム間にてリアルタイムに共有するとともに,海上や陸上にいち早く通知する.これにより海洋の理解は更に深まり,海洋に関する資源,防災,安全などの各重要課題について,より具体的な議論が進められる.この実現には,遠達性と汎用性を備える従来の海中音響通信とは別に,海中における高速かつ大容量伝送を提供する新たな情報伝達手段の確立が必須となる.
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