小特集 2. 都市連動型メタバースの夜明け

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Vol.106 No.8 (2023/8) 目次へ

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接近するバーチャルとリアル――メタバース・ディジタルツインの現在と未来――

小特集 2.

都市連動型メタバースの夜明け

The Dawn of the City-linked Metaverse

川本大功

川本大功 KDDI株式会社事業創造本部

Haruku KAWAMOTO, Nonmember (Business Exploration & Development Division, KDDI CORPORATION, Tokyo, 102-8460 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.8 pp.705-710 2023年8月

©電子情報通信学会2023

Abstract

 メタバースについては様々な定義が提唱されているが,おおむね「インターネットを通じてアクセスでき,ユーザがアバタを用いて活動できる3D空間サービス」と言うことができるだろう.本稿は,メタバースを実在都市へ拡張する概念である「都市連動型メタバース」を概観するものである.都市連動型メタバースの誕生の背景となる「バーチャル渋谷」の立ち上げの経緯や活用事例について紹介する.その後,メタバースや都市連動型メタバースを定義するための要件や都市連動型メタバースの可能性について論じる.

キーワード:都市連動型メタバース,メタバース,バーチャル渋谷,バーチャルシティ,ディジタルツイン

1.は じ め に

 都市連動型メタバースという概念は,緊急事態宣言下の2020年に公開した渋谷区公認の配信プラットホーム「バーチャル渋谷」の開発後,運営やステークホルダーとの議論を通じて徐々に形作られたものである.そのため本稿でもそのプロセスをたどり,2.でバーチャル渋谷の開発の経緯,3.で運営を通じて整理した定義,4.で都市連動型メタバースの可能性について述べる.

2.都市連動型メタバースの誕生

2.1 生活者と都市との関係の再構築

 バーチャル渋谷が誕生した背景にはKDDI(以下,当社),渋谷区観光協会,渋谷未来デザインの3社が中心になって進めている「都市体験を拡張すること」をテーマとしたプロジェクト(1)がある(図1).コロナ禍以前は拡張現実(以下,AR)を中心にリアルの渋谷とディジタルな渋谷とを徐々に融合させていくことで,ソフトウェアで来街者の都市体験を拡張させていくというアプローチを取っていた.

図1 都市体験拡張の実証実験のイメージ((C)KDDI株式会社)

 しかしコロナ禍による外出自粛に伴い,来街者を対象としたアプローチは取れなくなり,発想の転換が求められた.そのころ生活者の間ではリアルで会えなくなったことを補完するように,仮想的に誰かと会う行動が自然発生していた.会うという行為は,単に誰かと顔を合わせる,ということではなく,誰かと同じ「時間」と「空間」を共有するという行為である.

 しかし,テレビ電話で相手の顔を見ながらコミュニケーションを取ったり,オンラインゲームで仮想空間に集まって遊ぶことはできても,都市に出掛けて誰かと会うことはできない.そこで,人が集まる象徴的な場所として渋谷駅前のスクランブル交差点をインターネット上のバーチャルな空間として作り,そこで誰かと会える体験を提供することで,希薄化した渋谷と生活者の接点を維持するだけでなく,都市と生活者の新たな関係性をバーチャルな都市体験として提示することができると考えた.


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