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接近するバーチャルとリアル――メタバース・ディジタルツインの現在と未来――
小特集 3.
多様な感覚を惹起する神経刺激とメタバース
Neurostimulation to Elicit Multiple Sensations and Metaverse
Abstract
経皮電気刺激は皮膚上に設置したゲルや皿などの電極から微弱な電流を印加することによって,様々な神経を非侵襲(低侵襲)に刺激して様々な感覚を提示したり,筋運動や唾液分泌等の効果器の働きをアクチュエートすることができる技術である.経皮電気刺激は軽量で安価,小形な装置だけで様々な神経系を刺激することができるため,場所を選ばずに利用できるという意味で,メタバースなどのネットワーク空間を利用した活動においても利用が期待される.本稿では,メタバースにおいて特に活用が期待される運動や移動,食に関連した経皮電気刺激について解説する.
キーワード:経皮電気刺激,感覚提示,効果器アクチュエーション,VR,AR
2020年10月末にFacebook社がMeta Platform社に社名を変更するというニュースから,メタバースに関する様々な社会の動きが起こり始めた.メタバースはニールスティーブンスンの小説であるスノウクラッシュの中で登場する概念である.彼はあとがきの中でメタバースはcomputer generated universeであると述べており,バーチャルリアリティという言葉が気に入らなかったから定義したと言っている(1),(2).一方で,小説の中において,主人公がメタバース空間に入り込むために,ゴーグルと魚眼レンズを利用するとされているように,非常にバーチャルリアリティ(VR)に近しい描写がなされており,小説の内容もVRのような空間で様々な活動を行うというものである.このため,メタバースの定義はスノウクラッシュの内容から一意に定まるものではなく,その内容から推察することになるものである.
このような背景もあり,昨今のメタバースに関する社会の動きの中では,様々にメタバースが定義されており,メタバースの共通の定義はない(3).一方で,いずれの定義の中でも現実世界とは異なる空間(スノウクラッシュではuniverse)に多くの人が入り込んで経済活動を含めた様々な体験をするための技術を指しているように見える.
そこで,本稿ではメタバースを「経済活動を含めた様々な活動を行うことができるように,ネットワークにつながれて多人数に開かれたVR空間」と捉えるものとする.
メタバースに求められる機能とはどのようなものだろうか? これはメタバースの利用や普及のシナリオによって異なってくると考えられるものの,多くの場合は現在ビデオチャットアプリケーションやECサイトで賄われている機能がメタバースに統合されるものと考えられる.更に,動画像共有サイトでの,動画像視聴というコンテンツが,VRのように体験をもたらすコンテンツへと変わっていき,動画像共有サイトのように体験共有サイトなどとも言える形態となっていくものと考えられる.
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