小特集 6. 人のディジタルツインの動向

電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
Vol.106 No.8 (2023/8) 目次へ

前の記事へ次の記事へ


接近するバーチャルとリアル――メタバース・ディジタルツインの現在と未来――

小特集 6.

人のディジタルツインの動向

――もう一人の自分“Another Me”実現への挑戦――

Trends in Human Digital Twin: Challenge to Realize a Digital Alter Ego “Another Me”

深山 篤

深山 篤 日本電信電話株式会社NTTデジタルツインコンピューティング研究センタ

Atsushi FUKAYAMA, Nonmember (NTT Digital Twin Computing Research Center, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Tokyo, 108-0075 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.8 pp.728-734 2023年8月

©電子情報通信学会2023

Abstract

 現実空間の対象を計測・モデル化し仮想空間内に再現しシミュレーション等に活用するディジタルツイン技術の中で,人を対象とした応用が進みつつある.本稿では人ディジタルツインや関連分野の動向について概観し,その発展形として筆者らが研究開発を進めているAnother Meを紹介する.Another Meは元となる人の本人性を有し,仮想空間で自律的に活動し,その結果を本人に還元することで,時間・空間や身体の制約を超えた本人の自己実現や成長を可能とするものであり,その要素技術や現在の到達点,将来の課題について述べる.

キーワード:ディジタルツイン,メタバース,ディジタルヒューマン,サイバーフィジカルシステム

1.人ディジタルツインとは

 近年,ディジタルツインの活用が様々な分野で進んでいる.ディジタルツインは,現実空間に存在する物体や人,システム,環境など対象のデータを収集し,対象とうり二つの双子(ツイン)が仮想空間に存在しているかのようにディジタルモデルとして再現する技術である(1).元来は生産ラインにおける工作機械や,航空機のエンジンなどを対象として,その形状や動特性をモデル化し,シミュレーションに供することで,設計の効率化や予防保守などに役立てられてきたものである.更には,生体のセンシング,映像・音声などのメディア認識,AI(人工知能)やCG(コンピュータグラフィックス)などの要素技術の進展により,人を対象としたディジタルツインの研究が進んでいる.以降,本稿で扱う人ディジタルツインの定義を明らかにしていく.

1.1 人ディジタルツインの定義

 図1に人ディジタルツインの概念図を示す.一般的な物のディジタルツインとも共通する部分が大きいが,おおむね以下の3点の要件が挙げられる.

図1 人ディジタルツイン(DT)の概念図

 (1)個人性

 ディジタルツインは,実在の対象をディジタル化したものであるため,元となる特定の人物,または,特定の属性を持つ人物の集合の存在が想定される.したがって,人ディジタルツインは,個人の何らかの持続的性質としての「個人性」を表現したものになる.


続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。


続きを読む(PDF)   バックナンバーを購入する    入会登録

  

電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。

電子情報通信学会誌 会誌アプリのお知らせ

電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード

  Google Play で手に入れよう

本サイトでは会誌記事の一部を試し読み用として提供しています。