小特集 7. ディジタルツインのための数理・情報技術と産業応用

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接近するバーチャルとリアル――メタバース・ディジタルツインの現在と未来――

小特集 7.

ディジタルツインのための数理・情報技術と産業応用

Mathematical and Information Technologies for Digital Twin and Industrial Applications

藤澤克樹

藤澤克樹 九州大学マス・フォア・インダストリ研究所

Katsuki FUJISAWA, Nonmember (Institute of Mathematics for Industry, Kyushu University, Fukuoka-shi, 819-0395 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.8 pp.735-742 2023年8月

©電子情報通信学会2023

Abstract

 最新の数理・情報技術を活用することによってディジタルツイン(フィジカル空間及びサイバー空間)の構築を行い,都市や地域及び産業界の抱える諸課題の解決を推進していく,いわゆるSociety 5.0実現の試みが推進されている.本稿ではディジタルツインのための最新の数理・情報技術に関する研究及び具体的な産業応用について解説を行い,現在推進中のスマート工場構築プロジェクトについても解説を行う.

キーワード:サイバーフィジカルシステム,ディジタルツイン,スマート工場,数理最適化,機械学習

1.は じ め に

 主要な産業分野,特にサイバー空間を主体としたサービス産業に関してはビッグデータ活用などの物量によるイノベーションは巨大な先行者利益をもたらしている.しかしながら,昨年(2022年)頃から産業競争分野の重点がサイバー空間からサイバー・フィジカル空間に移動しつつあり,これまでサイバー空間でのビジネス展開において圧倒的な支配力を誇っていた,いわゆるビッグテック系の企業の勢いにも変化が見られるようになった.これからのサイバー・フィジカル空間での戦いにおいても,先行して大規模なプラットホームを構築することが,サービス開発において有利な点に変わりはないと推測されるが,単に取得するデータ量を競うだけでなく,モデルの正確さや費用対効果などの質的な面が,具体的なアプリケーション開発においてより重要になってくることが予想される.

 このような流れの中で,国内外において最新の数理・情報技術を活用しながら,ディジタルツイン(フィジカル(実世界)及びサイバー空間)の構築によって都市や地域及び産業界の抱える諸課題の解決を推進していく,いわゆるSociety 5.0実現の試みが推進されている.これらの中心となる概念であるサイバーフィジカルシステム(CPS: Cyber Physical System)(図1)においては,実社会のデータ(人・‘もの’・金・情報などのモビリティ)から,サイバー空間での最適化計算やシミュレーションを行い,その結果を実世界に反映させることによって,新しい産業の創出,コストや廃棄物排出の削減,働き方の改善に寄与するアプリケーションが多くの産業界(社会インフラ,製造業,小売系など)から期待を集めている.

図1 サイバーフィジカルシステム(CPS)の構成要素  実社会で起きている現象をディジタル化することによって,より良い現実世界を目指すためのアプリケーション開発が可能となる.CPSにおいてはフィジカル(実世界)及びサイバー空間の対によるディジタルツインを構築していく.

 ディジタルツインはCPSの根幹となる概念であるが,ディジタルツインと似た概念にメタバースがある.メタバースはディジタルツインのように必ずしも実在するフィジカル空間を再現する必要はないが,実世界と同じように人々(いわゆるアバタ)が集まって活動を行うことができる仮想の活動プラットホームである.そのため,ディジタルツインはシミュレーション空間,メタバースはコミュニケーション空間と考えることもできる.

 本稿ではディジタルツインのための最新の数理・情報技術に関する研究及び具体的な産業応用について解説を行い,現在推進中のスマート工場構築プロジェクトについても解説を行っていく.更に後述するようにディジタルツインの構築と運用においては,図1のようなループの1周期をどれだけ高速に実行するのかが極めて重要である.


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