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接近するバーチャルとリアル――メタバース・ディジタルツインの現在と未来――
小特集 8.
ゲームエンジンが作り出す世界とディジタルツイン,メタバース
The World Created by Game Engines
Abstract
ゲームは処理能力やメモリの向上とともに空間解像度,時間解像度が上がり,よりリアルタイムに近づき,シミュレーションされる要素が増えている.その過程で開発環境として普及したのがゲームエンジンである.多くの要素を開発しなければならないゲーム分野に使われるゲームエンジンはゲーム以外の分野でも利用されるようになり,近年ではディジタルツインやメタバースなどでも活用されている.本稿ではゲームエンジンとリアルタイム3Dの未来について論じる.
キーワード:ゲーム,ゲームエンジン,ディジタルツイン,メタバース
筆者の私事から始めて恐縮だが,筆者は子供の頃から画面の中で展開するインタラクティブなコンテンツであるゲームという分野に大きな魅力を感じてきた.残念ながら筆者が育った家庭ではゲームは禁止されており,友人たちが家庭でファミリーコンピュータに夢中になる中,パソコン雑誌を参照しつつMSXでプログラミングを写経し,ちょっとしたゲームを作るくらいのことしかできなかった.その後,進学した私立の中学で無線,パソコン,プログラミング,電子工作などを主な活動とする科学技術班(母校では部活動を班活動と称してた)に所属し,ある程度のプログラミングスキルを身につけた.
当時の筆者の技術力ではドット絵を動かしスペースキーを連打して簡単な物理シミュレーションを適用した相撲をするくらいがせいぜいだったが,初歩的なゲームの仕組みを理解できる程度には学べていたと言える.
高校在学中の1992年,筆者は教員の紹介で筑波大学のオープンキャンパスに参加した.そこで出会ったのがヘッドマウントディスプレイとフォースフィードバック付きの操作把を備え,画面の中の物体をこて,のこぎり,槌などで加工することができるバーチャルリアリティ(VR)システムだった.現在のものと比べるとディスプレイは重く,画面の解像度は低く,シミュレーションも高精度ではなかったが,初めて体験するVRは高校生だった筆者に大きな衝撃を与えた.
将来ゲームは全てこのバーチャルリアリティシステムのようになるだろう.自分がゲームを作り出す側に回るために,バーチャルリアリティが勉強できる大学へ行こう.当時の筆者はそう考えた.
実際は筑波大学に合格することはできず,電気通信大学へ進学したが同大学の電子情報学科でハードウェア,ソフトウェアのほか,人間工学や経営工学など多くの分野の基礎を学ぶことができた.筆者はこれらの知見を生かしてゲーム産業で長く活動できているため,この決断は正しかったと言える.
なお当時は研究室や研究者を意識していなかったが,後年になってこのとき筆者が見学したのは日本バーチャルリアリティ学会会長を務められた岩田洋夫教授の御研究だったと知った.
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