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解説
携帯電話用電力増幅器の変遷と進化
Transition and Evolution of Power Amplifiers for Mobile Phones
A bstract
携帯電話用電力増幅器(PA)は携帯電話の世代が第2世代から順次第5世代へと進み,要求仕様の変化に対応し進化を繰り返してきた.第2世代のPAは飽和形PAが中心であるが,第3世代以降は線形PAが中心となる.世代が進むにつれ端末の構成が複雑になることでPA出力とアンテナの間の損失が大きくなり,新しくアンテナ出力電力の高い仕様の出現も加わりPAの出力は増加してきた.またデータレートの向上に対応するため変調信号の瞬時最大電力と平均電力の比(PAPR)が大きくなり,バックオフを取った状態での効率向上が必要となった.これらに対応するためPAの高効率化技術はますます重要となる.近年適用・開発されている三つの代表的な高効率化技術を紹介する.
キーワード:携帯電話,電力増幅器,高周波回路,高効率,低消費電力,線形化技術
第2世代の携帯電話であるGSM(Global System for Mobile Communications)が1991年にサービスを開始して以来,携帯電話は進化を続け,現在では第5世代の携帯電話であるNR(New Radio)に至っており,更には近年第6世代の携帯電話の議論が活発になされている.電力増幅器(PA)に必要な特性は携帯電話の規格や構成によって,大きく変化する.携帯電話の各世代の特徴とPAに要求される仕様について表1と図1を用いて紹介する.表1には各世代の携帯電話規格の特徴と対応するPAの特徴を示す(1).図1には各世代の携帯電話のRF部の構成を示す(2).
GSMではデュプレクス方式としてFDD-TDMA(Frequency Division Duplex-Time Division Multiple Access)を採用している.つまり送信・受信バンドが分かれている.かつ,ユーザごとに送信・受信を異なるタイミングで間欠的に送受信を実施する.変調方式には位相変調であるGMSK(Gaussian Minimum Shift Keying)を適用しており,変調帯域は270kHzである.この変調信号には振幅変化がなく,振幅変化の指標であるPAPR(Peak to Average Power Ratio)は0である.このため飽和電力増幅器を適用できる.送信タイミングが限られる間欠動作のため,送信動作時の瞬時電力を大きくすることができ,0.7~0.9GHz帯で最大33dBm,1.7~1.9GHz帯で最大30dBmのアンテナ出力がある.代表的なRF(Radio Frequency)部は図1(a)のような構成で,ピンクにハイライトしたPA出力にフィルタ,アンテナ切換スイッチ等が加わる.このためPAの出力は約35dBmとなる.出力電力制御・間欠動作への対応は一定入力電力に対してPAのバイアスで制御する方法と,入力信号レベルを変えて制御する方法が普及した.GSMは息の長い技術で図1の第5世代までの各世代の端末のRF構成に全て含まれている.
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