解説 トポロジー最適化法による光デバイス設計

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 解説 

トポロジー最適化法による光デバイス設計

Design of Optical Waveguide Devices Using Topology Optimization Method

辻󠄀 寧英

辻󠄀 寧英 正員:シニア会員 室蘭工業大学大学院工学研究科もの創造系領域

Yasuhide TSUJI, Senior Member (Department of Engineering, Muroran Institute of Technology, Muroran-shi, 050-8585 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.9 pp.834-840 2023年9月

©電子情報通信学会2023

A bstract

 高性能な光デバイスの開発のため,計算機シミュレーションを用いた自動最適設計が盛んに行われている.なかでも,トポロジー最適化法は最も自由度の高い設計法であり,設計者があらかじめ基礎となる構造を用意しなくても,設計の過程で構造のトポロジーを変化させながら,目標とする特性を実現する最適な構造を自動的に創出することができる.トポロジー最適化はこれまで考えられていなかった構造を見いだす可能性があり,光デバイスの可能性を大きく広げる設計法として期待される.本稿では,光導波路デバイスの設計のためのトポロジー最適化の定式化と実際の応用例を紹介する.

キーワード:光導波路デバイス,トポロジー最適化,有限要素法,随伴変数法

1.は じ め に

 技術開発が加速し,より高性能な素子をより短いサイクルで開発することが求められている.近年の計算機及び数値シミュレーション技術の進展により,計算機上で素子を設計・開発することが普通に行われるようになり,更に進めて計算機を用いた自動最適設計法に関する研究が数多く報告されている(1).初期の自動最適設計法は,設計者の知識に基づきあらかじめある程度の構造を設定し,その寸法あるいは形状を最適化するというものが主流であったが,近年では計算機にトポロジーまで含めて最適な構造を創出させるトポロジー最適設計法(1)(4)の開発が盛んに行われ,様々な素子の提案がなされるに至っている.トポロジー最適化法は設計者の知識によらずに求められる特性を満たす素子構造を得ることができるため,人間の知識を超えて,これまでに思いも付かなかったような素子構造を見いだせる可能性がある.

 トポロジー最適化法は様々な分野で活用されているが,本稿では光導波路デバイスのトポロジー最適化法に絞ってその原理と応用例を紹介する.

2.トポロジー最適化法の原理

 図1に光導波路デバイスの最適設計のイメージを示す.素子構造を数値パラメータ(設計変数)で表現し,特性が改善するように設計変数を最適化する.図2に最適化法の分類として,大きく寸法最適化,形状最適化,トポロジー最適化の違いを示している.トポロジー最適化では最適化の過程で穴が開くなど構造のトポロジーの変化が生じるのが大きな特徴である.


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