解説 ポリマー変調器による超高速光伝送

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 解説 

ポリマー変調器による超高速光伝送

Polymer Modulators for High-speed Optical Transmission

横山士吉

横山士吉 九州大学先導物質化学研究所先端素子材料部門

Shiyoshi YOKOYAMA, Nonmember (Institute for Materials Chemistry and Engineering, Kyushu University, Kasuga-shi, 816-8580 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.106 No.9 pp.841-848 2023年9月

©電子情報通信学会2023

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 近年,信号処理密度の高いデータセンター応用やBeyond 5Gの実現に貢献する光デバイスの開発では,既存の材料やデバイス応用を超えた革新的な技術の開発が求められている.特に光変調器は高速光信号を生成するキーデバイスであるが,その高速化は喫緊の課題である.ポリマー光変調器は,光信号伝送の高速化のみならず小形化や低消費電力化,または半導体光技術との融合で高い潜在性を有しており,世界的に注目を集めている.本稿でポリマー光変調器を取り巻く状況と高速光伝送の現状について解説する.

キーワード:光変調器,ポリマー,電気光学,光導波路,高速光伝送

1.は じ め に

 近年,高速化と多様化が進む短・中距離光ファイバ通信技術において,光イーサネットの速度は400ギガイーサ(GbE)の実用的開発から1.6テライーサ(TbE)の技術展開と課題の議論が進められ,ますます幅広い産業分野でのネットワーク活用技術の広がりに期待が集まっている.既にCisco社がグローバルIPトラヒックの予想(1)で示したとおり,IPネットワークに接続されるデバイス数は世界人口の3倍を超え,M2M(Machine-to-Machine)接続シェアは,2018年の33%から2023年には50%に拡大している状況にある.アプリケーションによるIoTでも,コネクテッドホームやコネクテッドカーなど急速な成長率が予測されている.また,効率の高いITインフラ設備を持つデータセンターのハイパスケール化も進み,イーサネット用光トランシーバの開発ロードマップでは,2030年には3.2TbEのリンクスピードの達成が記されている(2)

 光通信機器の信号生成速度は,電気―光変換を担う光トランシーバの性能に依存し,これまで光ファイバ通信技術の中で適切なデバイス選択がなされてきた.特に近年,中・短距離伝送用途で注力される小形・低消費電力化技術ではシリコン光技術と融合した光トランシーバも実現し,データセンター用の光インタフェースの高性能化につながっている.光トランシーバは高速光信号伝送のキーデバイスであり,光受信機と送信機で構成されている.特に光送信機(トランスミッタ)には高性能な光変調器が必要であり,その高速化は光トランシーバの性能を決定する.

 産業界を中心としたイーサネット標準化の策定では,400GbEの通信サービスの実現の後,次世代0.8~1.6TbEへの対応,更に10TbE級の展開が求められるなどその開発構想は明確である.一方,これらを実現する光インタフェースの開発は,既存の最先端技術を結集しても対応できるものばかりでなく,例えば10TbE級光インタフェースを構成する超高速機器の開発では革新的な材料・デバイスに関する研究シーズも実用化の鍵となり,将来に向けた技術投資も重要となる.高性能化が望まれるデータセンター用の光トランシーバ開発を例に挙げると,センター設備内において通信能動部のサーバやネットワークスイッチ類はICと光送信速度(データレート)の高速化とともに,数年ごとに更新される.一方,各種のモジュールは規格化されたチップサイズや電力供給が維持される.したがって継続的な光トランシーバ開発では,規定サイズモジュール内への集積性と高速化,すなわち小フットプリント化を一層進めるとともに,高性能化に伴うデバイスの発熱や使用電力の抑制も重要な開発要素となる.


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