小特集 2. 「ライフライン」としての次世代サイバーインフラの実現に向けて

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通信障害と社会

小特集 2.

「ライフライン」としての次世代サイバーインフラの実現に向けて

Realizing Next Generation Cyber Infrastructure as “Lifeline”

中尾彰宏

中尾彰宏 正員:シニア会員 東京大学大学院工学系研究科

Akihiro NAKAO, Senior Member (School of Engineering, The University of Tokyo, Tokyo, 113-0033 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.107 No.1 pp.29-37 2024年1月

©2024電子情報通信学会

Abstract

 近年の大規模な通信障害で我が国の社会経済活動に大きな支障が出たことは記憶に新しい.社会経済活動や生命の維持のために情報通信を基礎とするコンピュータやネットワークを駆使して創造される「サイバー世界」を支えるインフラ「次世代サイバーインフラ」が重要である.これからは,国家の命運を左右するとも言われる「人類のライフライン(生命線)」としての重要インフラである次世代サイバーインフラを産学官で実現するための活動を推進するべきである.

 本稿では,電子情報通信学会での産学官への提言に向けた取組みを紹介し議論する.

キーワード:次世代サイバーインフラ,Beyond5G,6G,重要インフラ,産学官連携,ミッションクリティカル

1.背     景

 現在,Beyond5G/6Gの実現を標榜し,2030年代の実現に向けてBeyond5G/6Gといった次世代情報通信の研究開発がグローバルで進んでいる.

 我が国では,Beyond5G推進コンソーシアムが,大容量・超低遅延・超多数接続に加えて,低消費電力,安全性(量子通信),拡張性(宇宙・海洋),自律性(機械学習・AI)などの通信の特徴を飛躍的に進化させることを,次世代の情報通信技術の目標として掲げており,Beyond5G/6G(用語),ローカル5G(用語)などの最先端の情報通信技術の研究開発に国をあげて取り組む活動が進んでいる.

 昨年の大規模な通信障害で我が国の社会経済活動に大きな支障が出たことは記憶に新しい(1)

 世界に目を向けると,ロシアのウクライナ侵攻では,12%以上の家庭で移動体通信サービスを利用できなくなり,移動体通信事業者の基地局の11%がサービスを停止,同国の通信インフラの20%が停止(2022年7月の調査)したと報じられている.また,電気通信セクタの経済損失は1億米ドル以上と見積もられている(2)

 このような状況から,社会経済活動や生命維持のために,情報通信を基礎とするサイバー世界を支えるインフラ「次世代サイバーインフラ」の重要性が高まっている.

 サイバーとは,コンピュータやそのネットワークに関するという意味で使われることが多い.筆者らが掲げる「次世代サイバーインフラの研究開発」という言葉には,もはや,通信工学だけではなく,大規模な計算能力を活用する機械学習やAIなどの情報科学との融合,また,データの活用や新技術の活用に社会受容性を考慮しながら取り組む,「総合知」の学際的アプローチが必要であるという想いが込められている.

 情報通信を中心とする次世代サイバーインフラは,多くの制約を解決する手段として利活用が進むことが予想される.パンデミック,自然災害,国際紛争,大規模通信障害など,新たな社会課題が発生し人間の行動が大きく制約を受けている.我々の社会活動は,サイバーインフラによりかろうじて継続が可能となっている状況であり,強じんかつインテリジェントな次世代サイバーインフラが求められているのである.


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