小特集 3Dキャプチャ技術の進化と展望 小特集編集にあたって

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Vol.107 No.10 (2024/10) 目次へ

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小特集

3Dキャプチャ技術の進化と展望

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 黒川茂莉

 コンピュータビジョン分野の技術発展は目覚ましく,カメラで視覚情報を2Dで切り取り処理するだけでなく,3Dでキャプチャし活用する方向にも発展している.3Dでキャプチャすることにより任意の視点に切り替えることが可能となり,応用の幅が大きく広がる.この流れは,Apple社製iPhone/iOSに搭載された深度センサ,Object Capture機能の効果もあり,加速している.本小特集では,このように昨今発展の著しい3D映像を支える基礎とその応用の両面から解説する.

 現実世界の視覚情報をキャプチャし3D映像/3Dモデルとして構成するには大きく二つのアプローチがあり,①キャプチャのための専用デバイスを用いる方法,②カメラで撮像した2D画像から3Dモデルを構成する方法がある.本小特集では1章で①,2章で②について解説する.1章では①として,東京大学石川涼一特任研究員から,レーザ照射により対象物との距離を測る専用デバイスであるライダ(LiDAR)や,ライダとカメラの組合せにより,3Dモデルを構成する技術を解説する.2章では②として,(株)Preferred Networks加藤大晴氏から,一般のカメラで撮影された2D画像から3Dモデルを構成するフォトグラメトリ技術の発展として,深層学習技術に基づくNeural Radiance Fields(NeRF)や3D Gaussian Splatting(3DGS)と呼ばれる手法により一気通貫で高精細な3Dモデルを構成する技術を解説する.

 3Dモデルを構成することで,自由な視点からの映像生成が可能となる.(株)クレッセント鈴木理之氏からは,数十台のビデオカメラを用いて空間を囲み撮像した動画像を基に動的な3Dモデルを構成するボリュメトリックキャプチャ技術を撮影,データ処理,レンダリングなどのステップに分けて体系的に解説し,Virtual Reality(VR),Augmented Reality(AR)などへの活用も解説する.ボリュメトリックキャプチャ技術は,3Dに加え時間方向の動きも捉えられるという点で,4Dキャプチャとも呼ばれる.また,(株)サイバーエージェント武富貴史氏から,ボリュメトリックキャプチャ技術や深層学習技術などを用い,3D空間で人物の顔,髪,手などの身体の部位ごとに対応した写実性の高い表現を実現するディジタルヒューマン技術について具体例を交えて解説する.

 以上のとおり,本小特集は,3Dキャプチャとその活用に関して体系的かつビジュアルに解説を行っている.各章を読み進めると,3Dの計測,フォトグラメトリ,ボリュメトリックキャプチャ,人物再現への適用と当該分野の基礎から応用へ理解が進められる構成となっている.本小特集が発展著しい3Dキャプチャ技術の理解の一助となれば幸いである.

 最後に,多忙な折,執筆に御尽力頂いた執筆者の皆様に感謝申し上げます.また,小特集編集チームの皆様には執筆候補者の提案・調整や校閲などに御協力頂きました.この場をお借りし,感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 黒川 茂莉   粟野 智治   西村 康孝   宮﨑 太郎 


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